タピオカ屋93〜ヤクザがタピオカ屋を営業した末路〜

チャッチャラバベ太郎

やくざがタピオカつくったら

「もう潮時だな、ヤス」

「あ、姉御そんな…!」

黒塗りの高級車の中でヤスと呼ばれたハゲは絶叫した。

「ここまでやってきたんですやん!途中で投げ出すなんて歴代最強の女組長の姉御らしくもない!」

「いや、私にはこれ以上は無理なんだ」

「姉御!姉御がそんな事言うなんて俺見損ないましたよ!」

ヤスは涙を流し始めてしまった。


「もう農業はこりごりだっつてんだよ!なんで私が鍬持って腰メリメリ言わせてエンヤラコンヤラやらなあかんねん!」

持っていた鍬を畑に叩きつけて全身農業クソダサルックの姉御はキレた。

「私ら泣く子も黙る893やぞ!芋作ってJKのタピ活応援してやる義理はねーんだよ!」

「姉御、タピオカ (葡: tapioca、木薯) は、トウダイグサ科のキャッサバの根茎から製造したデンプンのことって分かる読者は少ないと思いやす!」

「Wikip○diaからの引用じゃねーかよお前の説明もよお!北東ブラジルから地球半周のデスレースで手に入れたキャッサバをなんで私らが地道に育てなあかんのってことを言ってんだよ!見ろよこの手!銃の打ち方も忘れた鍬のタコが出来た手だよ!」

「ッハ、姉御左手の薬指に指輪が!結婚してたんすか!?」

「キャッサバ盗んで薬指落とした時お前も居ただろうが!これはダミーだよ!」

姉御はダミーの薬指を取ってそれを強く握りしめた。

「くそうくそう…私はレイプ犯からチャカで救ってくれた組長に恩を返したくてここまでやってきたのに…なんで農家のおばちゃんになってるんだよ……」

「落ち込む事ないっす!姉御はすげえっすよ!俺なんか中学の頃からモルヒネ乱用して地元の駅に火放ったところを使い捨ての鉄砲玉として拾われたんすから!」

「銃弾はあんまり手元に残しとくもんじゃねえな!」

ケラケラ状況もわからず笑っていそうなヤスを見て姉御は頭を抱えた。

と、その時姉御のケータイに電話が入る。

関東支部の部下からだ。

……もしかしたら新しい仕事か!?この岡山の秘境から1年ぶりに出られるのか!?

「私だ、なんの用だい!」

「すぐに来てくれ!応援が必要なんだ!」

「よっしゃ行くぞヤス!」

「はい姉御!」

収穫したキャッサバをワゴン車の荷台に積んでいたヤスは大きな返事をした。


「あっ来たか!お前ら手伝え!キャッサバ降ろして裏の厨房に持っていけ!」

「なんだこれ」

「何ってタピ活中のJC、JKの列だよ!こんだけの列なら材料が足りないんだ!」

「もうやだ!!!!」

姉御は膝をついて泣き出してしまった。

「泣くな、No.3。命の危険を晒すことの無い仕事で金策が出来るなら損は無いだろう。祭りの屋台のテキ屋だってうちは副業でやってた。それの延長上だと思え」

後ろから尊敬してやまないイケボが聞こえ姉御は泣き止んだ。

そうだ、組長が期待してくれてるんだ。どんな仕事でも私は組長の為なら出来る!

「組ちょ…」

姉御が振り向くとそこにはサイズの合わないセーラー服を着た49の顔に傷を負ったスキンヘッドのおっさんが立っていた。

「まずは主な客層の気持ちを理解しようと思ってな。娘の中学の制服を借りてきた」

「娘さんキレないんすか?」

「…バレたらしばらく口聞いてくれないだろうな」

「じゃあやんなよおおおおおおおおおお!」

姉御は空に向かって魂の絶叫した。


「まあタピオカドリンク飲んで落ち着け。ほら」

「…意外と美味しい」

「タピ岡ァ!おかわりだ!」

「ハイっす!」

「ヤスあんたそんな名前だったの!?」

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