中途半端な知識と謎の想像力でとにかく思考する暖炉くん
またたび
第1話 I think 告白
「先輩、好きです! 付き合ってください!」
僕こと
風に当たりたくて昼飯を屋上で食べようとしたら、金髪の男と清楚な委員長の告白シーンに遭遇してしまったのだ。
「俺と……ってことでいいのか?」
「はい!」
バレないようこっそり影に隠れる。
——さてどうしよう。
好きです。
I love you.
ジュテーム。
月が綺麗ですね。
今までにあらゆる告白を見てきた。(ただし文学作品内にて)
しかしまさかその場に遭遇してしまうなど、いとおかし。
どうすればいいので候。
とりあえず買った肉まんを頬張る。まだポップコーンだったら映画鑑賞の気分になれていたのに。
「嬉しいけどよ……俺はこんな見た目の奴だぜ? 委員長みたいな清楚な人とは真逆だと思うが」
「むしろそこに惹かれたんです! だから気にしないでください!」
——なるほど。何処かで聞いたことがある。
自分にない部分を人は相手に求めるらしい。
言わば僕が求めるのはピーマンの食べられる女性ということになる。
「こんな俺でもいいのか?」
「もちろん!」
いいムードだな。
——そういえば。いいムードで思い出したが、結婚式での定番であるブーケトス、あれ、今後はなくなっていくらしいな。
あれを取れる取れないで差別的な概念が生まれる。そもそも、独身であることが悪いこととして認識されている。
それらの理由からブーケトスはよろしくないと判断されたらしい。今後独身は増え続けていくらしいし、時代だろう。
「じゃあ改めてよろしくな」
「うん……///」
ブーケトス。
理由もしっかりしてるし、なくなって当然なイベントではあるが、それでも一つの文化が消えていくのは悲しいなあ。
「で、でもよ、俺、こう言うの初めてでさ、デートとかどうすればいいのか分からないぞ?」
「動物園とかどうかな?」
——動物園か。
食物連鎖の頂点に立った我ら人類は、ついに科学によって遺伝子すらも操れるようになった。
その時点でもう十分、自然の摂理を破ってるのにも関わらず、さらに人間は動物を檻に閉じ込めて鑑賞し始めるとは……。
Wow Crazy !
「動物園か……」
「あっ、水族館でも楽しいと思うよ?」
——水族館か。
あそこも同様、動物を鑑賞するための施設だな。やけに高いヌイグルミとかもある。
時々思うのだが……。深海魚がたまに水族館に展示されていることがあるが、もうあそこで飼育されている時点で深海魚ではなくね? ふと思ってしまうのだ。
分かっている。
分かっているのだ!!
普段は深海に住んでいる生物だから深海魚と言っているのであって、所詮この意見は詭弁に過ぎないことなど分かっているのだ!!
だがそれでも、時々思ってしまう……。
お前……さも自然に深海魚を名乗っちゃってるけど、この水族館は深海じゃねえよ!
——と。
「水族館か。ああ、そうだな、水族館に行こうか」
「うん!」
無事、二人の初デートの行き先が決まったらしい。良かった、良かった。
——あっ!
ここで僕こと暖炉は忘れていた彼のことを思い出した。幸せムードの中、忘れ去られようとしている存在……その名も……。
ブーケトス、である!
てれててて てれててて
あの音楽が胸の奥に鳴り響く。
ブーケトス、お前の生き様を最後に僕が残してやるぅ! 今しかない!
ばさっ
「えっ、誰?」
僕は影から現れ、花束を投げる。
泣きながら!!
「愛をこめて花束を! ブーケトスじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
だが当然、カップルと僕以外いないので受け取るのも僕である。
「リリースアンドキャッチ!」
これでブーケトスも報われただろう……。
「さらばだ。素敵なカップルよ。どうか幸せであれ——」
ガチャ
僕はさりげなくバレないように屋上のドアを開けて去った。
「……あいつ誰?」
「……知らない人」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます