ボクは魔王の胃世界に放り込まれてしまった

ディージィーアール

第1部 序章 エレメンタルを駆使しろ

第01話 ガイダンス

「君は、ワシマくんと言う。うん、ブルースケルトン族だね」

 オレは、西洋の立派な騎士の格好をさせられ背もたれの無い石の椅子に座っている。

「いいかい?ガイダンスを今から行う」

 初めて聞く言葉と言う奴にも素直な方が良いと教養、いや、教訓の感を感じる。

 挙動不審は殺される。そして、素直な方が気分が良い。

 永年の叡智から来る。全ての知的把握、コンタクトそれはひどい言い方でも愛に転じる。こう、深い底の無い一面性の無い奥深さを感性で垣間見るからだ。

「ワタシみたいなタイプには、波動の違いしか無い。まず、これを覚えてもらおう。我々を魔王軍と呼ぶ。ワタシみたいなタイプは人間にしか見えないんだ」

 はあ、強いかどうかではどうって事は無い。ザコだ。殺せ。自由を得ろと思う。しかし、脳を読まれていたかのようだ。眼前に今、拳が有り風が顔面に吹き荒ぶ。これを、突風と言う。

「これが、パンチ。エレメンタルりょくでばれるから」

 音が突風を説得力とする。パン、と乾いた音の強大な物が身体中に響き渡る。骨がビリビリ言うほどの衝撃だ。炸裂音自体は、バリバリと身体に働きかける。

「わかったね?やれ」

 恐怖で、言うことを聞かされる。ダメージを負った身体なら尚更だ。

 小娘と言うには背の大きい、それでいて若い小娘と調度呼ぶに等しい年の女が、黒い髪を逆立てるまでも無く、右拳を突き出した。鼻を明かされた訳だ。

 言葉と言う便利なものは何だ……。

「ああ、なるほど比較対象が無いと駄目だと言うタイプ。エレメンタルには本来が備わっている。仕事だと思え」

 彼女は、息を吸った。

「命令する」

 これ位は、わかる。死ねと言われてるのでは無い。死の直面かどうかを相手にコントロールされているのだ。

 オレには、瞬きと言う効能は無い。

 何か、人では無い。もう一度、近くに近づかれた。その上、命令された。姿形が見えなかったから、負けが分かる。「仕事だと思え」の説明の最中、彼女は余裕で場所を移動し、音も無く、眼前を右から左へと横切る。繫がら無い整合性はワープだと思うが、ただの技術だ。

「次、エレメンタルの基本を説明する。光は物の認識に良い。しかし、調整が有るに越したことは無い。炎と同じままでは炎でしか無い。今から、それを覚えてもらおう」

 こっち、彼女は右手で指を揃えて床を示す。オレは、光をその方向性に、仕向けようと思う。ジェネレーターに命令し、腹部に力を入れるように、永遠の努力が要る筈だった。V字に光は床を添い這う。

 成功だ。

「次」

 姿勢を正す。号令の様だ。

「ここのラインにエレメンタルが止まる様に。防御の基本です。鏡を覚えたら、カウンターが取れるので」

 彼女は床に魔力だろう影で一本のラインを横に引く。剥き出しの石畳の部屋だ。オレの光はそれを浸食してしまっている。規則正しく並べられた平行に椅子も配備されている。概念を覚えるための部屋は距離を覚える部屋の様だ。彼女にあっさり距離を取られたことを、覚える。

 先程の要領、上手く伸びない。自己保身か弱くかと思うが、弱くしたならば、目の前の獣に喰われてしまう気がする。

 獣など存在し無いが。彼女は防御と言った。発言したか。意識か?光はコントロール出来、炎のままだと退化する?この様な感じが皮膚感と言う部分に襲いかかって来る。彼女の指は同じ形、少し、前屈みだ。

 ギギギギギ、コントロール制御のパワーを上げる。前屈みに待ち構える感じだ。自然だと尚良い。これは、ばれる。鼻を明かされてはなら無い。鼻が隠れ、瞳に対する光からのガードを考えた気がする。考え抜いたと言うべきか、ライン状のアーマーヘルムは、三つのピンで止まる。上から見ると滴り落ちる水滴に見える事を発見した。少しはねる後尾の部分、上半身のアーマーに襟の様に立った金属部分を足そうと思った。勿論、直立し、フロントの部分が開いた設計だろう。しかし、これは見送った。関係無い彼女は言う。

「それにしても、君。流線形のヘルムなんて良く考えたよね?案外ばれないかもよ?弱点、それ含め」

 自己保身か、あっさりとクリアのラインまで行く。魔力の暴走か波動が滞留するそれが押し流す様に渦の様だが邪魔な者を撃退するため攻撃意思を持つ。

 目の前の存在、彼女から感じる。


「今、ニンゲンの呪詛が忘れることに拘っていて、これ、無いことになっちゃうから。いい?ワタシの事スルーするの。だから、身体に焼き付けて。開発した物も忘れる。君は、努力が無かった事になる。成り変わるのが魔法なの。多分、それ、一生懸命開発した。テスト済み。珍しいよね?そんな感じ」

 首を少し、持ち上げた。希望が映る。しかし、失念は絶望と勝機を掴まれること、狂気の後悔の世界へとぶち込まれるだろう。日光が部屋に奇跡的に差す。それが、彼女の肩越しに映る。ガラスの歪んだ光だ。線の内側にエレメンタルの光は止まったままだ。それで、初めて日光が見える。弱い光だ。魔法の光だ。採光はこれに依る。気がするのは、もう効いている証拠か?

 彼女は畳み掛ける様に続ける。

「はっきり言ってワタシ魔法の天才だから。それでも上がいる。わかった?」

 頷く。限界だ。死に面した感じでは無い。精神力が限界に。神経に異変を来たした。

「それでも、ワタシの事忘れ続けると思うわ」

 指は後ろを振り向けと命令する。後ろを振り向き立方体と呼びたくなる部屋から出る筈だった。黒が随所に有る洋服を着た女だと思う。

 魔王軍だから、ワープする。彼女はその時、髪は白くなっていた。魔法の実行に適した姿に成っていた。

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