遠い星の二人

ラプラシアンに案内され、

ナブラ達三人はラプラシアンの家に着いた。


「え!?

嘘でしょ…………?」



ナブラ達が目にした建物は、

外側から部屋を取り囲むように造られた

丸い通路がある見覚えのある特徴的な家だった。


「え~!!

この家、僕の家とそっくりだよ!!

ねえラプラシアン?

早く家の中もみせて!」


「いいよ。

じゃあ、三人とも中へどうぞ」





「本当だわ……。

家の中の間取りや家具までそっくり。

ねえ?

パパもそう思わない?」



「本当だね。

私の家と瓜二つじゃないか!」



「驚かれていますね。

この家は、ボクの母が昔働いていた

研究所の建物を複製して改装したものなんですよ」



「ラプラシアンのお母さんは

研究所で働いていたんだね。

それでか~。

ラプラシアンが頭いいのは

母親譲りなんだね」



「そんなことないって。

それにね、実は母さんが研究の仕事を

していたことをボクが聞かされたのは

最近のことなんだ」



「ふ~ん。

ラプラシアンのお母さんは

どうして最近まで黙っていたんだろうね?」



「ボクもわからないんだよ」



「ただいま~!


あら?

この人達はあなたのお友達?」


ナブラ達四人がいたリビングに

一人の女性が入って来た。



「うん。

お姉ちゃんおかえり」



「お姉ちゃん?

今日はバイト行かなかったんだんだね」



「そうよ。休みもらったの

今週お母さん出張でしょ?

あなた達の夕食作らなきゃだし」



「そうだったんだね」



「ところで、私にもご挨拶させて。

はじめまして。

私はラプラシアンの姉ハモニアと言います。

今日は弟の為に遊びに来ていただいてありがとうございます。

汚い部屋で申し訳ありません」



「いえいえ。

そんな、急に押しかけたのは私達家族の方ですし、

そんな気を遣わないでください。


私はこの二人の父親のフラックスと言います。

ほら、二人も挨拶して」



「ハモニアさんはじめまして。

あたしはデルタって言います」



「僕はナブラっていいます」



「フラックスさん、デルタさん、ナブラくん

ですね?

よろしくお願いいたしますね~」



「ラプラシアンくんのお姉さんは礼儀正しく感じのいい人だね。

これからよろしくね」

そう言ってナブラの父親はハモニアに握手を求めた。


「…………」


「…………??

どうかなさいました、ハモニアさん?」



「そうですかね~?

ボクは姉は普通だと思いますよ~」

突然、ラプラシアンが先程の話の続きを急かすように

握手をしようとする二人の間に割り込んだ。



「そんなことないよ、ラプラシアン。

パパの言うとおり。

僕の姉ちゃんとは大違いだよ」



「なんですって!?

ナブラ、もう一度言ってみなさい!!」



「まあまあ、二人とも」


「ラプラシアンは黙ってて!」


「クスクス。

お二人ご姉弟はとっても仲がいいんですね。

うらやましいわ」



「全然そんなこと無いですよ~!

賢い弟さんを持つハモニアさんのほうが

うらやましいですよ」



「あ!

ところでみなさん?

今から夕食の準備をするところなんですが、

よろしければここで夕食 食べていかれませんか?」



「そんな、

悪いですよ~」



「遠慮しないでください。

お姉ちゃん、

この人達はボクの命の恩人なんだ」


「そうなの?

じゃあお姉ちゃん、今日の夕食頑張って作るわね」



「さあ、弟の恩人のみなさん、

有り合わせでつまらないものでお口に合えばですが、

沢山召し上がってくださいね」


「わ~!

美味しそ~!

いっただっき~す!」



「こらこら、ナブラ!

今ハモニアさんが分けてくれているから待ちなさい。

お行儀が悪いぞ!」


「だって~パパの方が量多いし~!」


「パパは大人だ!」


「アハハ、ハハハ!」



「フラックスさんのご家族は

本当に仲がいいですね~?」



「そんなこと、

ありませんよ。

毎日こんな生意気な弟と暮らしていると、

あたしみたいにうんざりしますから……。

ハモニアさんに弟のナブラ差し上げましょうか?」


「う~ん、お言葉は嬉しいですが、

こういうことは一度お母さんに聞いてみたいとですね~」


「ほらね、ナブラ。

ハモニアさんは遠回しにあんたなんてお荷物で

いらないって言ってるのよ」


「姉ちゃん酷~い!」


「まあまあ、デルタさんもナブラくんも落ち着いてくださいな」



「ところで、

ハモニアさんは一緒に料理召し上がられないんですか?」


「え~とですね、

実は私はみなさんより少し早く食べてしまったんです。

ごめんなさい」


「そうなんですね……」




ナブラ達はラプラシアンの家で夕食をご馳走され、

夜も泊まらせてもらえることになった。





「ねえ、デルタ?

寝る前に少しお話しない?」



「はい」


「私達同じくらいの歳でしょ?

二人で話す時は普通に話していいわ」



「わかったわハモニア。

実はあたし、普段遅くまで起きててね。

だから今日、眠たくなるまでの時間どうしようか考えていたところだったの。

だから、よろこんで」



「ありがとう。

この辺りはね、一年を通じて夜が一番快適な気候なの。

だから、一緒に玄関の外に出て話さない?」


「うん、いいよ」


ハモニアが足を止めた先は、

家のすぐそばの丘に立つ一本の広葉樹の前だった。


デルタはすぐに上を向き空を仰いだ。

「素敵……」



「星空、綺麗でしょ?」



「そうね。

あたしの住む場所の夜空も、もちろん星空は見えるけど、こんなにはっきり明るくは見えないわ」



「考えてみると不思議よね~。

この星空の遥か何万光年と遥か彼方の星で、

デルタ達が暮らしてるなんて」



「へ~。

ここがあたし達が生活していた世界とは違うってことだけはわかってはいたけど、

ここはあたし達の住んでいた星とは違う星だったのね」



「そうよ。

私は、ラプラシアンと一緒にいるときに

お母さんから石の秘密を教えてもらったの」



「あなたの弟さんが持ってるあの石って不思議よね!

どんな秘密があるの?」



「あの石はね、

あたし科学とか詳しくないからなんとなくしか

わからないけど、

不思議な現象をたくさん引き起こすものらしいわ。


弟から、あなた達に能力をみせたって聞いたから言うんだけど、弟が使う光とか色とかを操る能力もその石の影響らしいの。

それにね、

この石には今こうして私達が出会ったように

遥か遠い場所通しを繋ぐ力もあるの。



「ねえ、あなた達は明日はまだこの星にいるわよね?」



「うん。

パパやナブラがあの調子だから、多分帰るのはもう少し先でしょうね」



「よかった~。

じゃあ、明日は

あなた達にこの星の素敵な場所たくさん案内してあげるね!」



「本当に?

ありがとう」



次の日、

ナブラ達三人はラプラシアンとハモニアに案内され、

空に浮かぶ空中都市、

お茶碗を逆さまにしたような山、

潜っても普通に息が出来る海、

そして、

最後にラプラシアンの秘密基地に案内してもらった。



そして、あっという間に3日目が過ぎたときだった。


ナブラはこの世界に来る前に、

この世界での1日が実際は1分にも満たないことを母親から前もって聞かされ知ってはいた。

しかし、ラプラシアンの家にこれ以上経済的負担をかける訳にはいなかいという父親の意見から、三人は今日帰ることにした。



「本当にこれでキミ達とはお別れなんだな。

なんだか、ボクにはまだ実感がわかないな……」



「確かにそうよね!

あたしも全然実感わかないわ」



「ねえナブラ?

ボクはなんだかキミ達とはすごく長い期間一緒にいた気がするよ。

……………………」



「どうしたのさ、ラプラシアン?

黙っちゃって」


「ごめん、ナブラ。

じゃあ、元気でな!

デルタさんと喧嘩してまた泣かされるんじゃないぞ!」



「ちょっとラプラシアン?

どうして、そのこと知ってるのさ~!」



「ああ、ちょっと小耳に挟んだだけだよ……」



「ちょっとお姉ちゃん?

ラプラシアンに話したの?」


「だって、誰かに話したら駄目なんて、

あんたあたしにそんなこと一言も言わなかったじゃない?」


「も~!

そんなこと、言わなくてもわかるじゃんかー!」


「最近までおねしょしていたガキんちょのあんたたが、年上の姉のあたしに歯向かうなんて生意気よ!」


「そんな誤解されそうな言い方やめてよ~!

おねしょしてたのはずっと小さかった時じゃん!」



「あんたの知能はその頃も今も対して変わらないじゃん」



「クスクス」



「ほらほら!

お姉ちゃんが変なこと言うから~、

僕ハモニアさんに笑われたじゃんか~!


ハモニアさん!

これは違うんですよ~」



「いえいえ、大丈夫。

私はデルタがナブラくんをからかって

大げさに言ってたのは

ちゃんとわかってたわ。

ただ、二人の会話が面白くって、

クスクス」



「まあまあ、

ボクのお姉ちゃんもこう言ってることだし、

ナブラも落ち着いて」



「うん、話の輿を折ってごめんね、

ラプラシアン。


僕は、また新しい方法をみつけて

ハモニアさん、そしてラプラシアン!

また必ず遊びに来るよ!」



「ああ、約束だ!」


ナブラとデルタ、父親の三人は、

時々後ろを振り返っては、

異世界の友達との別れを惜しみながら

ラプラシアンの石が照らす光の先の

自分たちが元いた世界に向かって進んでいった。

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