コンパイル
真智、四葉、谷先生、グリ、そして愛理栖。
そんな5人が宙の意識を救い出す作戦の当日。
作戦を実行に移す少し前、
愛理栖は集まった真智達4人に向かって話し出した。
「ねえ真智?
昨日私が説明した話覚えてる?」
「愛理栖の説明 難しすぎ~! あんなの覚えてないよ~!
あっ!でもね、一つ思いだした。
”意識”の正体が本当は違うもので、錯覚してるんだよね?」
「そう、正解!
それでは、この作戦に不可欠な”時間”の正体についてみんなに説明するね」
「了解~!」」」」
「キミ達が『時間』と言っているその本当の正体はね、過去から未来への一方通行じゃないの。
つまりね、キミ達の五感だけでは全てを感じることが出来ない高次元空間の一部ということなんだ。
高次元空間とは何かというとね、
私達が住んでいる3次元の空間にさらに別の次元が加わったもので、
私達には想像もつかない形や動きを持っているんだよ」
「なあ愛理栖?
それは複素数で表したミンコフスキー時空図のことやないか?」
「谷先生鋭いですね!
正解です」
「????」」」
「あらら、谷先生以外みんな目が泳いじゃってる~。
おーい、みんなしっかり~!」
あたし達は愛理栖のその一声で現実に引き戻された。
「じゃあ具体的に説明するよ。
最初の一つ目は横軸の『虚数軸』。
虚数軸とはね、平面上で縦に引いた直線で、
上方向が正の虚数(iや2iなど)、
下方向が負の虚数(-iや-3iなど)を表すものだよ。
虚数軸の原点より右側はね、私達が普段感じている重力作用が支配する世界だよ。
そしてそれはね、次に説明する縦軸実数軸のエレベーターを上向きに上がり続けているの。
二つ目はさっきふれた『実数軸』。
実数軸とはね、平面上で横に引いた直線で、右方向が正の実数(1や2など)、左方向が負の実数(-1や-4など)を表すものだよ。
これはね、乗客の足の早さや体重によって上昇スピードが違うマイエレベーターだと思って。
また、それぞれのマイエレベーターには共通して言えることがあるんだ。
それはね、階が上がる度に世界のエントロピーというものが増えていくっていうこと。
エントロピーとはね、物質やエネルギーの乱雑さや不確実さを表すもので、時間の流れと一緒に増加する法則があるんだよ。
キミ達が感じるあらゆる物体の変化や移り変わりはね、時空図右側部分の範囲内で君達それぞれが自分専用のエレベーターから周りを見渡したときに観えているものなんだ。
そしてここからが重要だよ!
君達それぞれのマイエレベーターより下は君達それぞれにとっての過去になるんだけど、
私の力でVR装置を載せたまま止まってしまったエレベーターに働きかけて、一気に私達の階まで上昇させるの。
そうすることでね、キミ達には世界がまるでビデオの逆再生のようにみえるとおもうんだ」
「・・・」」」
「うちにはなんとなくわかった。
でもな、じゃあ仮にそうだったとして
これを宙を救う作戦にどう役立てるんや?」
「この場所で取り戻すんです」
「取り戻すって何を?」」
リアクションは谷先生よりもあたしのほうが早かった。
「真智は私達のすぐ目の前に焼却炉見えるよね?」
「うん、見えるよ」
「今からみんなで協力して、
宙の意識データの入ったVR装置を灰にしてしまったこの焼却炉ごと、逆変化させるの!
逆変化とはね、物質やエネルギーが時間の流れに逆らって元の状態に戻ることで、
例えば焼けたパンが生地に戻ったり、
壊れたガラスが元通りにくっついたりすることだよ。」
「逆変化?」」」」
真智達には更なる疑問が浮かぶ。
しかしあいにく愛理栖は準備で忙しそうにし始めていたので、真智は周りを見回したりして時間を潰すことにした。
「あれ? 谷先生、どうしてここにパソコンを持ってきたんですか?」
「愛理栖に頼まれてな」
「そうなんですね。パソコンで何を動かしているんですか?
「MODだ」
「MOD?」
谷先生も忙しそうにしていたので、真智は質問をしなかった。
真智にはMODが何のことなのかさっぱりわからない。
パソコンの画面には右に8桁と左に8桁、左右合計16桁からなる数字とアルファベットの組み合わせが
上から下まで気が遠くなる程延々と続いていた。
——————————————————————
【登場人物】
•
•四葉
•谷先生
•
•グリ
—————————————————————
: 高次元空間とは - Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E6%AC
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