アリウム_act.3

 話はかわるがね。生活習慣病というのはご存知か?ソウソウ、それだ。


 糖尿病、脳卒中心筋梗塞、高血圧…贅沢病なんても言われるがね。日々のだらしない生活習慣や日常的な無理がたたって体を病んでしまうことだ。


 主な原因は、飲酒、喫煙、暴飲暴食、ストレス…これもまたさまざまだな、ウン。


 これくらいは耐えられるだろうということが生活習慣となり、塵も積もって山となるわけだな。そして、消耗品たる我々の体が限界を迎えて体をこわす、と。


 もともと、何万年と歴史を紡いできた人間の営みの中にない現代特有の習慣が入ってくると体が順応できなくなることから、また現代病なんて言われている。


 吾輩の見立てでは、キミはこのやっかいな現代病にかかってしまっているようだ。イヤ、そんな深刻な顔をしないでくれ。ここに来てくれた以上、どこに病巣があるのか、何が病状によく効くかも責任をもっておしえてやるぞよ。マア、そう焦るでない。


 偉そうな物言いだが、コレは誰しも持っているものなのだ。それがなければ逆に病んでしまう類のものが、多すぎるために病んでしまっている。本来ならば体を守る物質が過剰すぎて体を害するアレルギーと似ている。


 モウ、これ以上じらすのも悪い気がするから、いってしまうとだね。キミは孤独という病に侵されているのだ。


 ハトが豆鉄砲を食らったような顔だなあ。フフフ、おおかた横文字のわけのわからない精神疾患でなくて胸をなでおろしたが、吾輩の言っていることにピンと来ていないというような様子か。


 そうだなア、無理もない。


 生活習慣病のやっかいなところは、ある程度まで体を蝕まれ、体の限界が来たある日再起不能な症状が表面化するまでは、いつもの生活習慣の中にいるということだ。


 糖尿病なら、いつもの食生活が、殊にいつもしている暴飲暴食がソレに当たるわけだが。吾輩の言い方だと、キミの病は暴飲暴食をしていることですなどという、原因を指して病気と言われているような不可解な表現であるなと思うことだろう。


 イヤ、しかし、そうとしか言いようがないのだ。たくさんの症状が、徐々に表れてくる。それも、病というにはおこがましいような、人間社会に生きるのならひどく日常的な、人と人との摩擦のようなものばかりなのだ。ナニガシ症候群と名付けるなら説明も気持ち楽になっただろうが…。吾輩は、この学園の隅に唯々部屋をいただくものゆえに、お医者様や学者様がするように、偉そうに名前を付けることができないのだ。


 わかっておる。わかっておる。その顔は話の流れについていけていないという顔だ。イマ、例えをもちいて説明してしんぜよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る