放射性同位元素のような

韮崎旭

放射性同位元素のような

 よーちゃん聴いて、またラヂオが話してる、ねえ、大型で強い台風12号は現在、奄美地方を強風域に巻き込みながら北上しており、中心気圧は976ヘクトパスカル、国内で観測された最大瞬間風速は57メートル(石井町)、ねえ、またうなってるのわんわんいうよ、耳がさあ、気持ちわあるいんだ、ほら、現地では、不要不急の外出を控えるとともに、ざざー、あさのニュースの時間です。ルクセンブルク議会は先月、国内のみで流通させる地域通貨の発行を決定したことを、、、、エボラ出血熱の感染が拡大している模様です、現地では、すでに4000人の死亡が確認されており、きわめて致死性の高いこの病原体は現在、国内では世界保健機関のマニュアルに基づいて1類感染症に分類され、キノコのソテー。シギサワキイロシマダケを食べやすい大きさに切ります、わあ、元気のいいキノコですね、はい農協の直売所で、国連や世界保健機関では中心気圧が検疫をより強化するとともに、動植物の取引、特にインフォーマルまたはイリーガルなものが警戒の特別な対象となって農協で、はい、これはこの地域の特産品の中心気圧が964ヘクトパスカルのきわめて致死性の高い病原体で、患者の体液、排泄物、嘔吐されたもの、などから感染することを行うゆえに、伝統的な葬儀が行えないなどのデメリットが感染の封じ込めを妨げる、はい、4ミリくらいできると、このキノコのシャキシャキした、原因にもなっており、なおかつ、西洋医学への根深い不信感も問題ではあるのだが、ではそこに、ポストコロニアリズムの問題が全くないとはたして誰が言えるだろうか? キノコを油で炒める専門家の秋原さんをお呼びしました、秋原さんは長崎大学熱帯感染症研究所でながらく4ミリくらいの縞模様に切ったキノコを炒めて、感染症に関して、とくにラッサ熱の原因となるウイルスの生態……?に関して専門的な研究を行ってきましたが、これは行政の問題でも同時にありますね、とはいえ現在の南北問題に代表されるような、いわば、植民地支配の負の遺産とも切り離せない問題ではあるのだはないか、というわけで、フランス現代史が専門の、林野さん、どうお考えでしょうか?「いやこれは理性の問題ですね、パスカルが言ったような、いえ、パスカルに限らず、理性を問題にしてきたあまたの哲学者たちに、理性なんてはっきり言って、あったのか、なかったのか、ということです、理性、あると思います? パスカルとの関連性は置いておいて。」「そうですね(秋原、返答して曰く)ウイルスの心理学、ウイルスの倫理学、ウイルスの修辞学、非常に興味深い問題。人間はなぜ死ぬのか? これは初めから前提が間違っていて、死ぬものだけを、我々は人間と呼んできたわけです。死ぬから、生物というのであって、ではウイルスは死ぬのか? これには14の学派があります。古代のユダヤ人たちの士族よりちょっと多いかな、胡椒ひとふりぶんくらい、多いですね。ウイルスは我々が生活上通常呼ぶような生殖や死を持つのか? はい、そうです、これに関して意見は分かれている、でも私は『キノコのソテーが出来上がったようですが』キノコはまだ、生物『ではない』と思いますね。どだい、外見が気持ち悪い。」「私は人間が考えているとは思いませんね、自治体にでも何でもしておけばよかったものを、死力を尽くして支配する、ばっかじゃねーの」ぐるぐる、うごうご、きこえるよう、ねえ気味が悪い!


 彼女は斧を手に取ると、それをおもむろに遠心力を万全に活用して振り回したがあまりにも唐突だったために周囲の人間がよけきれずに切り分けられた。ぼたぼたとおちる腕、脚、胴体、あたま、それに祝福するかのように血が滾々と湧き出してはあたりに水たまりを広げてゆく、振り回し続ける彼女は次々にあたりの人間をバラバラにしてしまう。上品そうなライラック色のセットアップのご婦人がそのセットアップを切り裂かれ血で染めながら「ごぼぐご」のようなまったくお上品ではない断末魔をあげながら、自分の体液でできた湖に沈んでゆく、これに気がついて気が動転しだすかしださないかくらいの幼児には頭から斧を薪割の要領で振り下ろし、あたまを上手に割ってあたりにその小さくて愛らしい脳をばらまく。斧を勢いをつけて引き抜き、近辺であまりの事態に戸惑っていた青年の腹に刃のほうからたたきつける。腹が意外な弾力性で沈み込みつつ結果的には斧を深くくわえてしまい、そのくちばしはやがて黄色い脂肪が目にも鮮やかな割面となる、斧をそのまま反対側まで振りぬくのがたいへんだが頑張って一刀両断。一息ついたら次の人間を探す。それは場違いなダーリヤ・ペトローブナだったが彼女は19世紀末の長編小説に没頭しているところを後ろから、さぞかし凝っているであろう首の付け根に斧をたたきこまれその斧で断頭されて、麗しい文字の並んだ誌面に頭部がぐしゃりと、ぐしゃりといったのは頭部を受けた誌面だが、落ちてきて、そのせいでこぎれいに整った手から本を取り落とす羽目になった。当世風な着衣は新鮮な動静脈からあふれ零れる血で冗談のような赤になり、そうして最後にうるさいラジオの内臓を引きずり出すことに成功したのだ、めでたし。

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