エンディング1

GM:バックトラックはエンディング1が終わってから行います。


GM:

 カミーリアが倒れた事により屋敷が崩れ、空が欠け始める。この空間の崩壊が始まっている。一瞬でここが消え去るわけではないが、それも時間の問題だろう。周囲の崩壊に伴い、アルバローズを囲っていた檻壁もまた崩れ落ちる。


 一方カミーリアは、暖炉の側に眠るように倒れている。彼女には既に左腕の肩から先と、右腕の手首から先が存在しない。左腕は自らの攻撃の贄として焚べ、最後の攻撃を受ける際に右手も消費した。

 

フランシス:崩れ落ちた格好は辛いと思うので、寝かせるように姿勢を整えます。フランシスは何か言おうとしますが、言葉が出てきません。 


GM:では、しばらくするとカミーリアは目を覚まします。


カミーリア:「……まだ、私の身体-生贄-は残ってる。優しさは貴方をまた殺すわよ」


GM:声に出してはいますがとても戦える様子ではありません。 


フランシス:「止めはしないよ。また振り払うだけだから」 


カミーリア:

「そう……強くて、優しいのね、本当に。

 アルバ、アルバローズは大丈夫かしら…?」


 カミーリアはまだ正常に動く目を開き、探す


アルバローズ:「カミーリア……」


GM:アルバローズは、ゆっくりと貴方達二人の元に寄ってくる。


アルバローズ:「ありがとう、ごめんなさい」


 カミーリアを支える役をフランシスと代わろうと、その横にしゃがみ込む。


フランシス:無言で頷き、カミーリアの身体を優しくアルバローズに寄せます。 


カミーリア:「……貴方を、救、えなかっ……た。ごめんね」


アルバローズ:「大丈夫、大丈夫よ。今は少し眠りましょう?」


 優しくカミーリアの頭を撫でると、カミーリアは年相応の子供のような寝顔で意識を一度手放す。


アルバローズ:「フランシスさん……彼女に優しくしてくれてありがとう」


 アルバローズはフランシスに頭を下げる。 


フランシス:「いえ。ごめんなさい、ホワイトさん……いえ、アルバローズ。あなたたちと一緒にここを出ることは、私にはできない」


アルバローズ:「ええ、分かっています。どうして彼女がこのような状態なのか、ここがどこなのか、なぜここに居るのか……全て思い出せましたから」


フランシス:「……この屋敷で、カミーリアやあなたと喋ったこと、覚えているわ。それくらいしかできないけど、それくらいはするよ」 


アルバローズ:「カミーリアが好いていたのもなんとなく分かりますね、貴方は。……此処は世界と世界の狭間。有り得るはずの無い空間。あまり広く知られないほうが良いと思います」


GM:そう言ってフランシスから視線を外し、ティナの方を向き直る。


アルバローズ:「彼女にも、お話ししなければいけませんね」


 そう言ってティナの額に手をかざす。


※【major】《ファストフォワード》+《スティルネル》


GM:これによりティナにかかっている全てのエフェクトの効果を打ち消し、侵蝕率を7減少させます。


※ティナ 侵蝕率-7:225->218


アルバローズ:「これで、一旦大丈夫でしょう。ティナさん?」


ティナ:「ええ、随分と、頭の中がスッキリとした。ありがとう、アルバローズ。……それと、ごめんなさい。あなたとの約束、守れそうにない」 


アルバローズ:

「私は元より死ぬ覚悟です。ただそれすらも忘れてしまっていただけ。彼女の術で私自身の過去を見て、思い出すことができました……無欲の英雄なんかじゃ、ありませんが」


GM:眠るカミーリアの頭を撫でながら貴方達に語りかけます 


ティナ:「……無欲の英雄じゃ、なかった?」 


アルバローズ:

「はい。だって私は私が『そうしたい』と思ったからこそ、できることをしたまでです。それに…………いつも隣に居てくれた、大切な友人を悲しませる者を英雄なんて呼びません」


ティナ:「……そう。あなたはこれから、どうするつもり? どうすると言っても、大した選択肢があるとも思えないけれど」 


アルバローズ:

「彼女と共に逝きます。私が居なくとも世界はもう壊れることは無い。ならばせめて、最期は彼女の側に。……それが、ただひとつの、今の私の願いです」


ティナ:

「そう……なら私が、あなた達を殺します」


 ぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。無感情に、無機質に。一時でも隙を見せ、感情に流されたことを悔いるように、淡々と。


「私は、魔術師――究極の知を求める者。その在り方こそが魔術師であり、バレンティーナ・ロッソよ。だから私ね、絶対に許さないと決めている人間が、2種類いるの


 1つは、知識を侵す者。知識を蝕み、思考を鈍らせ、論理を弄ぶ者。

 もう1つは、魔術師を名乗りながら、知を求めない者。錬金術師は魔術師の源流よ。それを名乗るのは、私にとっては同じ意味を持つ。


 カミーリアは、その両方に踏み入った。彼女の振るう魔術は稚拙だったけど、尊敬に値するものだった。だからこそ私は、彼女を殺します」


アルバローズ:「彼女は手を加えずともこの空間ごと消滅してしまうでしょう……それでも、貴方は刃を振るいますか?」


ティナ:「ええ。それは私の感情とは関係なく、魔術師として為すべき事だから」


アルバローズ:「……なら、貴方達を元に戻せるように出来てから、お願いします」


 ほんのすこし、何か言いたげな仕草をしつつ、淡々と貴方の言葉に応えます。 


ティナ:「……ありがとう。止めないでくれて。あなたは間違いなく、私より魔術に長けている。私では、敵わなかった」 


アルバローズ:「どうなのでしょう。私は確かに限りなく、究極の知に近づきました。しかしてなお、友人1人救えません」


ティナ:

「……当然よ。究極の知とはそれ自体が目的であり、それによって何かを為せるものではない。大体、どれだけ近づいてもそれを得ることは出来ないわ。究極の知は全であるがゆえに境がなく、境なくして認識はありえない。だから究極の知を識ることは出来ず、それは常に外側にしか存在しない。限りなく近づいたというのは、届いていないという意味にしかならないわ」


アルバローズ:「……そんなものでしょうか」


ティナ:「そもそも、友人1人に拘る事と究極の知を目指す事、その2つは両立し得ないものだもの」


 それはアルバローズに向けた言葉であると同時に、自分自身への戒めに他ならない。改めて、自身は魔術師であると、そう意味づけるための言葉。


GM:僅かな沈黙が流れ、アルバローズが口を開く。


アルバローズ:「たぶん意味の分からない話ばかりしてたわね、ごめんなさいフランシスさん。あとは……私にできるとすれば、たぶんこれくらい」


 ティナに何かをした時同様、フランシスの額に手を翳す


【major】《リプレッション》

フランシス 侵蝕率-20:248->228


フランシス:「……ありがとう。結構体に来てたみたいだ」


 楽になった拍子にほんの少しだけふらつきつつ、アルバローズに笑いかけます。 


GM:ふらつく身体をアルバローズは白い翼で支えようとします。甘い香りと暖かさがフランシスを一瞬包みます。


アルバローズ:「ゆっくりしていても大丈夫よ。貴方達は必ず元の世界へ返すから」 


フランシス:「……なら、少しだけ」


 そのまま支えられます。 


アルバローズ:「少しだけ、目を開けて、カミーリア」


カミーリア:「アルバ……? ちゃんと元の世界に帰れたの?」


アルバローズ:「それは、叶えちゃ駄目なのよ。私達の時間はもう何処にも無い」


カミーリア:「でも、それじゃ……アルバが救われないじゃないか……あんな人間達の為に命をかけてたなんて……!!」


アルバローズ:「いいえ、違う。私はちゃんと救われてる。こんなにも私を想ってくれる人が世界に一人いただけで充分なのよ」


カミーリア:「…………じゃあ、もう良いのね」


アルバローズ:「ええ、だから、彼女達を返してあげて。私は最期まで、貴方の側に居るから」


カミーリア:「分かったわ……」


カミーリア:

「コードオフ”最愛へ贈る我が憎む星空(カレイドスコープ)”


 コードオフ”至る事無き未来(ヴィジョナリィ・キャッスル)”


 ……都合が良いと思ってもらって構わない。アタシは彼女の願いを叶えるだけ。……だけど、ごめんなさい。それとありがとう。きっと貴方達じゃなきゃアタシはもう一度彼女とはおしゃべりできなかった」


GM:アルバローズの翼に支えられ、白いつばさを赤く染めながら上体を起こし、両手のないカミーリアは貴方達に語る


ティナ:

「気にしなくていいわ、結果として神代の魔術の片鱗にふれることも出来たし……カミーリア、あなたと過ごした時間も悪くなかった。

 私自身の感情だけの話で言えば、あなたの境遇に思うところがないわけではない。私だって、友人が殺されてその仇を討とうとしたことがあるもの。それに比べれば、あなたのしようとしたことは随分と意味があるものだったんだと思う。


 だけど魔術師として、私はあなたを許さない。だからあなたを殺すわ。――私からは、それだけ。カミーリアも、遺言があるなら、今ここで」 


カミーリア:

「今更言うことなんて無いわよ。最愛の人と叶わないと思ってた最期を遂げる事ができるならそれで。

 あ、でも、二人に一つだけ。“帰りたい場所”を強く心に描きなさい。それだけよ」

フランシス:

「……一言だけ。カミーリア、あなたと会えて良かった。夢みたいな場所とはいえ、あなたと"私"が話したこと、忘れない」


 それだけ言って、目を閉じます 


カミーリア:一緒に屋敷を回った時のような笑顔で、フランシスへ微笑みます 


ティナ:

 ティナは、自分が首から下げていたネックレス……小さな鈴懸の木の葉っぱをモチーフにしたネックレスを、カミーリアの首にかける。


「これは、私が万が一の時にのために肌身離さず身に付けているもの。だから安心して。苦しくないはずだから


 Da Sycamore a Camellia. Fine della vita, pace della mente alla sua morte. Cioè, sono una persona che chiude la sua vita.(鈴懸から椿に贈る。その生に終わりを、その死に安寧を。我はすなわち、その命を閉ざす者なり)――」


 ティナは、詠唱を通じて丁寧に式を紡いでいく。


カミーリア:「じゃあ、さようなら。大好きよ、アルバローズ……」


アルバローズ:「私も好きよ、カミーリア。ありがとう、またね」


ティナ:

「――”Celebrazione fioritura(散花の言祝)”」


 その言葉の余韻が残るかどうかといううちに、カミーリアは眠るように意識を失う。しかしそれは眠りは、決して覚めることのないもの。《雨粒の矢》によりカミーリアにトドメを刺す。


※ティナ 侵蝕率+3:218->221


GM:

 2000の時を歩み続けた椿の花は、暖炉の側にて、ぬくもりに囲まれながらその生涯を終える。


 そしてカミーリアの死亡により崩壊現象は早まる。あとはただ、『帰る場所』を強く想うだけでいい。 


フランシス:「(ドレッドノート邸へ、"私"の居場所へ)」 


ティナ:「(ロッソ邸、私が探求すべき物が待つ処へ――)」 


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