第2話 銀座の店のメロン

お薬が切れてしまった。一番必要な時に。


だから昨日と、一昨日は地獄だった。


後から、恐ろしい副作用があるのを、さらっと聞かされた


性質の悪い安定剤しかなくて。でもそれを一気にお酒も飲んでやり過ごした。


いささか、それはまずいので、今日、お薬だけ貰いに、クリニックへ行って来た。


まだ朝早い、仕事や学校に、みんなが行く時間。


下りの車両は、隣町の乗り換え線がある駅に着くと


一気に人が下りて、閑散となる。


私の座った横長につながる、車両のシートの少し先に


やたら元気に威勢良くしゃべってる


おばちゃん(お婆さん?)の3人軍団が。


・・・まるで死んでるような人々の中で


おばちゃんは、いつも元気だな・・・。


と、いつもの様に、想っていたが、


ちらと見たその恰好から、こじゃれてて、お金もそこそこありそうな


おばちゃんだか、お婆ちゃんの、3人軍団。


何だか朝から、そんなめかして、下りのこの先、山位しかない電車に乗って


何処へ行こうとしてるのか。


心の中で、ちょっといらっと来る、感情宥めながら


でも嫌でも、聞こえてくる、彼女たちの会話に


どうしても、不快感を抑えきれなくなる。


望銀座の、某千疋屋の、メロンがどうだの


分からない子には、分からないのよね~だの


出てくる言葉は、金持ち自慢の言葉と会話ばかり。


逆に、こんな所で、こんな時間に、そんな会話を大声で垂れ流している彼女らに


「おばさん」の醜悪さと、憐れさと


女である事、おばさん、になること、年を取る事の、恐怖と嫌悪感が


爆発しそうで、私は、昔買った、某村上龍氏の、エッセイをまとめた


「自殺よりはSEX」と言うセンセーショナルな、まだ読み切って居ない


真っ赤な背表紙の本を、出して読み始めたが


彼女らへの嫌悪感と、そこから来る?心臓のおかしさが、抜けずに


隣の車両へ避難した。


人生100年?そんな個人の生きる時間まで、勝手に設定される必要なんてない。


どんな風に生きて、どれぐらいの人生を、自分で生きて往くのか


そんなものまで、「普通」のカテゴリーで縛られたくはない。


乗ってすぐに、目に付いた、以前からある広告「健康管理能力検定」


そのコピーや存在にも、イラつくのだが。だってきっと私はまるでそんな能力0だと烙印押されるの、決まってるから。


政府のお墨付きで、成人病予防学会?からも推薦されてる。


で、肝心の何て言う組織の、催してる物なのかと言うと


これまた「一般社団法人~~~。。。」


と。


あ~~~あ・・・。と、また、行き場のない、ため息が・・・。




ダラダラと欲望塗れで、薄汚く年取って何になる。


結局、一部の力持つ者の、餌食にされている事を


気付かないで、こんな時間に女が3人集まって、銀座のメロンの話をして


一体、この先山しかない下りの電車に乗って、


何処へ何しに行くと言うのだ。


クリニックのある駅に降りた。


駅のホームのトイレの横を通る時


若くて、まだ、可愛いのに


暗い顔をして、清掃員の制服を着て


他の男の駅員と一緒に、私の行く方向と別にすれ違う、女の子を見た。


はっとして、格差と言う物を


此処でも感じた。


改めて。


私も、いつか、この病気が治らない侭、ずっと


生きるしか無くなったら、命尽きるまで、一人、祖母の遺してくれた


実家と庭で


猫と暮らしながら、駅やビルの掃除のおばさんになって


生きて行こうと決めている。


でも掃除のおばさんで、生きて行こうと想ったのは


もう随分前から、想ったりしていた事。死が赦されないのなら。


貴女は、分からないけど、可愛くて若くて、もし私の様に、心身に異常がないのなら


もっと、可能性のある人生、歩んでよ。あんな、大人に負けないで。


心の中で、また余計なお世話の、エールを送った。

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