青春恋歌

岩本 りょう

第1話

今年、俺、坂東 翔太(ばんどう しょうた)は高校1年生になる。


特に何をするわけでもなく運動もそれなりに出来て、勉学の方も中の上だった俺には特に大きな悩みなどはなかった。


「私、片山 桃華(かたやま ももか)って言います。よろしくお願いします。」


中学2年の夏休み前、父親の仕事の移動で俺の家の隣に越して来た。うちの親父と片山の親父は高校時代からの旧友らしく家もたまたま隣なったこともあり一緒に登校するなんて機会も結構あった。学校で付き合ってるのなんだの噂された事もあったがそんなことは一切なくただ家が隣というだけの異性の友達、そういう関係が少し続いた。そんなある日だった。


「ねぇ、翔太?」


「あ?」


中学2年生の冬休みに入る前日の登校の時だったその質問は唐突に桃華の口から放たれた。


「翔太ってさ、付き合ってる人いるの?」


「へ?」


力無い言葉が開いた口から出た。


「だから!付き合ってる人いるの?」


「い、いや、いねぇけど、別に」


明らかにおかしな喋り方になった俺に対し


「ふぅん、そうなんだ...」


なにやら満足げに笑みを浮かべていた。今でもあの日のことは鮮明に覚えている。


そして月日は流れ何の進展もないまま俺たちは高校生になった。新たな制服に身を包み一緒に登校している姿ははたから見れば恋人同士とでも見えるのだろうか。どのように写っているのかは分からないだがあくまでも仲のいい友達、俺はいつからかそう区切りをつけて桃華に接するようにしていた。


これはそんな男の不器用なお話である。

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青春恋歌 岩本 りょう @iwamoto_ryo

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