まいご
やましん(テンパー)
『まいご』
あるばん、さっぱり、ねられないぼくは、ふらふらと、おさんぽしておりました。
むかし、父がどこかで拾ってきた、反射材付きの『たすき』を、ひっかけていますが、今夜は、あまり役には立ちそうにないです。
街灯はいつもの通り、灯っております。
まあ、街の中のこと、真夜中とはいえ、普段から、自動車も走れば、ひともあるくのです。
だいたい、本人があるいてるんですからね。
でも、おかしな事に、今夜はまったくの『静寂』そのものでした。
まあ、そんなこともあるのでしょう。
前の方から、おかしな人影が近づいてきます。
なんとなあく、体のバランスが、おかしいです。
頭が異様に大きいけれど、身体は落花生みたいで、手がものすごく長くて細い感じです。
なのに、足は、意外と太い。
その怪しい人影は、ぼくの前で、すっぱりと立ち止まりました。
で、こうおっしゃるのです。
『失礼します。あなた、どちらの星の方ですか?』
『ぶ! あの、地球人ですが………』
『おお、なんと、『地球人』さんが、まだいましたかあ! あの、ぼく、道に迷ってしまって、帰れなくなって・・・。教えてくださいませんか。ドン・ブラコ星系の第12太陽系のバカリタス群星に帰るのですが、置いてきぼりになってしまて・・。』
『むぎゃ。そりゃあ、ぼくの守備範囲ではないです。この先の交番か、あすこのお山の上には天文台がありますから、そこで聞いてください。』
『そんなあ、もったいぶらないでおしえてくださいよ。だって、もう、あなたしか、聞く相手がないんですよお。『地球人』は、ガンドロメガ大銀河系・・・つまり、ぼくらの銀河系ですが、の破壊を計画していたというくらいの科学力があると聞きましたよ。まあ、ぼくは下っ端で、ついて来ただけですよ。うらまないでください。『予防措置』だったんですから。いや、まあ、怨むのは当然ですね。でも、ここは、武士の情け、教えてください。』
『ううん・・・こまたな。ああ、『科学宇宙博物館』で、いまUFO展してましたから、そこにいけば、何かあるんじゃあないですか。』
『え? それ、どこですか?』
『えと、こう、行って、こう行って、こうです。3キロくらいかな。』
『おお、ありがとう。あなたについては、良い報告をしておきます。残党狩りにはならないように。では・・・さらば。』
そのおかしな人は、忍者のように、ものすごい速度で走って行ってしまいました。
コスプレの方だったんでしょう。
それにしちゃあ、走るの早かったなあ・・・
それから30分ほど、お散歩しましたが、不思議なことに、誰にも何にも出会いませんでした。
ふと、お空を見上げると、あやしい光が、割とすぐ近くから、宇宙空間に向けて飛び去るのが見えました。
『まさかね。あそこにある宇宙船は、SFの世界のもので、みな張りぼてだしなあ。』
ぼくは、お家に帰りました。
電気やガスはちゃんと来ていましたが、テレビもラジオも止まっていました。
短波放送もだめ。
航空無線も聞こえない。
デジタルの、チュルチュル音も一切消えてるし、なーーんにもない。
もう一度、コンビニにも行ってみたけど、誰もいない。
防犯ベルを押してみたけど、無反応。
だいたい、どこにも電話もメールも通じません。
ネット上の通信は、一定の時刻で、どれも固まったまま。
『こりゃあ、大変だあ。ほんとに、宇宙人の侵略かあ!!』
ぷるるるる・・・・・・
携帯が鳴りました。
『あ、さあっきの、宇宙まいごです。ありがとうございます。なんと、むかあし、この付近で行方不明になったぼくらの宇宙船がありましたよ。助かりました。あ、あの、情報なんですが、司令官たちが、攻撃する星を間違えたと言っていましたそうです。まあ、でも、やっちゃったものは、しょうがないです。あなたの命は保障するそうです。あなたが首から掛けてた『たすき』が、特殊な部材で出来た、我がスパイ用の防護服である事がわかりました。あ、あとから、『総合医療キット』を、そこらあたりに着陸させてくれるそうです。長生きできますよ。地球時間で、約3千年は大丈夫です。じゃあ、さようなら。本来の目的地に向かいます。』
『ま、ひとりで生きるのに、10年も3千年も、似たようなものだよなあ。』
ぼくは、つぶやきました。
何かが、空から降りてくるのが見えました。
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まいご やましん(テンパー) @yamashin-2
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