第2話 絶望の先

 彼女は絶望していた。

 何故なら今日、出ていった弟をやっと死体で見つけた瞬間に、奇妙な空間と共に化け物が出てきたからだ。

 その化け物に成す術なく弟の死体を目の前で喰い散らかされ、我を忘れて殴りかかった自分もあっさり返り討ちされた。

 全身が痛く、熱くて。そして、気持ちいい。身体を護る為に脳内麻薬に犯された頭には、致命傷は恍惚感に変わるみたいだ。周りに流れ出た血液の海は不愉快なぐらい冷めているのに。

 化け物は弟を喰い尽くした後、こちらをゆっくり向いた。絶対次は、自分を食べる為だろう。向いた姿は左右三つの眼球に喉の奥まで牙の生えた巨大な犬みたいな獣の姿で、グロテスクそのものだった。

 ……死ぬのかな? 私?

 ぱっくりと巨獣が口を開けた瞬間、少女は人生を諦めた。

 そして――。


「……なに、この……変な森は……?」

 

 彼女が上下左右から木々が生い茂る奇妙な霧に閉ざされた世界に迷い込んだのは、この瞬間だった。

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