第八話
三十五
―2016年7月下旬 深夜―
―港区 台場 潮風公園 入り口―
公園の入り口から入った所で、四人集まっていた。
公園は立ち入り禁止で封鎖が施されている。
先日の悪婆退治に続き、黒い男を交えた依頼だった。
煙の化け物が出没し、人を惑わすとの事だった。
近くにTV局も在り、問題になる前に解決との事だった。
中之が伝手でTV局を取材させずにいるのも限界だった。
最初は白の男達三人だけだったが、正体も判らず時間が掛かり始めたので、黒の男に白羽の矢が立った。
黒い男「レインボーブリッジ…! 封鎖出来ませぇン!」
山本高広風に言う。
青い男「…いります? それ」
アッサリ言う。
黒い男「イヤ…台場だし、一応やっとかんとな…と」
白の男「古ぃーな 今時の若いモンは知らんぞ」
痛いトコをツッこむ。
黒い男「いンスよ 雰囲気なんだから」
悪びれず、やった事に満足感を得ていた。
中之「あーいいですねー ぼくいいとおもいますよ~」
と中之だけ言う。
黒い男「あ、そスか?」
多分気に入ったな。
そう直ぐ解った。
黒い男「さてと…で、今回の件だけど…」
今回の煙の化け物を潮風公園まで誘い込んだ。
そこまでは良い。
だが、その先はまだだった。
後は追い詰めるだけだった。
中之「封鎖できませぇん!」
黒い男『イヤ、してるだろ』
白の男『してんだろ』
青い男『してますよ 川母利さん』
全員でツッこむ。
中之「へへへへ~」
やりたい事が出来たのか、一人満足げに笑う。
白の男「オイ中之、バカやってんな 仕事だぞ」
普通に怒られる。
中之「ハイ~…」
そしてお約束の様に凹む。
面倒だ。
本当に四十代なのか。
が、無視して続ける。
黒い男「一応、この潮風公園を閉鎖しているのは日の出の朝五時まで その間に斃さなきゃならない」
青い男「でも正体がわかりません…」
黒い男「それなら予測はついている 恐らく
白の男「霧の化け物か…」
黒い男「そう 恐らく、気体の身体を妖力とかで保っているんだと思う」
白の男「なるほどな…」
黒い男「言うなれば、状態変化を起こして、霧になって拡がったり、煙の様な状態になったりで人を惑わす」
青い男「あの…霧と煙ってなんか違うんですか?」
黒い男「そもそも煙っていうのは、燃焼した気体に物質が混ざっている状態の事を言うんだ」
青い男「へぇ…」
黒い男「霧で言うなら、水蒸気が急速に冷やされたのが湯気だ
水蒸気はそもそも無色で、水が熱で気化したのを、外気との温度差で冷やされて視覚化された状態が、湯気なんだ 霧が発生した時点で煙じゃない」
青い男「え…じゃあ…」
違いに気付き、思わず口に出す。
中之「? どういうことですか??」
その、"じゃあ" の意味が解らず首を傾げながら聞く。
黒い男「煙と言っているが、実際には煙じゃないってコト 今回はな」
注釈を付ける。
青い男「今回?」
黒い男「そんな妖怪も居るかも知れないからな」
青い男「ああ…」
漸く気付いたという感じで答える。
中之「あー!」
何かに気付いたのか中之が声を上げる。
黒い男「煙と水蒸気は違う 恐らく煙の様に揺らいでいるのであって、霧状に変化して幻覚を視せるってので、水蒸気の妖怪だ
…で、恐らくそれだとカテゴリーに当て嵌まるのが煙々羅なんだ」
中之の返答を無視して続ける。
青い男「へぇ…」
黒い男「此処数日の依頼を受けたって日の状況を調べてみた
調べたら、霧が発生する時は特に湿度が上がっている」
そう言って携帯を見せる。
青い男「ホントだ…! じゃあ、その気体の妖怪が対象なんですね…!」
漸く打開策が打ち出され、言葉が嬉々とする。
中之「そういうことだったんですねー!」
青い男「?…何がですか? 川母利さん」
その頓狂な問い掛けに判らず聞く。
中之「さっき言ってたのを理解出来てなかったってことなんですね そうなんですよね?」
と、青い男を向いて言う。
青い男「…は?」
中之「さっきの説明で、煙の様なって言ってたんで、煙じゃない 霧になってって言ってたんで、そーゆー状態になれるってことだと思いました!
だから、気体の妖怪なんですよね!」
そう言って黒い男を視る。
黒い男「そう…ですね」
中之「つまり、気体の妖怪っていうことが重要なんですよね! 煙か霧がもんだいじゃないんですよー!」
その説明に呆気に取られる。
青い男「そう…です」
中之「でも、霧か煙かでわからなくなってたんですよね!」
青い男「そうです…」
そのいつもと違うハキハキした喋りに驚く。
黒い男「…理解してたんですね」
少し驚きつつ言う。
中之「だから、そこがその妖怪をたおすヒントなんじゃないですかー?」
急に真理に近付いた事を言う。
白の男「中之はそーゆー時だけ何故か理解力高いからな
いつから解ってた?」
中之「えっとぉー…水蒸気の説明で、煙じゃないって所でです」
青い男「へぇ…」
真顔で感心する。
黒い男「…勿体ない」
使えばいいスキルなのに。
それが本心だった。
口から漏れた。
黒い男「…じゃ、それを踏まえて…」
話を続けた。
まさか、本当に中之先輩の一言が解決になるとは思わなかった。
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