第十七話

二十四



―2018年 4月22日(日)早朝 夜明け目前―


―渋谷区 マンション屋上―



もう、夜明け目前だった。


少女「あんな…バケモノの子供なんて産みたくないの…!」


青い男「わかる…だから戻ってきなって…! 手術でどうにか…」


苦エフ『そう、そうすれば"力"が手に入る』


少女「もうイタイのも怖いのもイヤ! だから…」


そのニュアンスで解った。


青い男「やめろっ! なんとかするから…!」


飛び降りようとしているのが。


苦エフ『そうだ! それをしたら"力"が手に入らない!』


少女「ムリだよ…堪えられない… こんな風になりたくて芸能界入ったんじゃない…」


青い男「解る…! だから…病院に行って手術しよう…! 助かるから…!」


苦エフ『"力"の為にね』


少女「…ムリ」


その発言を一通り聞き、顔を一瞥いちべつした。


それでのだ。


だと。


青い男「そんな…! ダメだ…!」


苦エフ『そうだ!止めろ!手に入らなくなるぞ!』


少女「…ウソでしょ?」


一蹴する。


涙を流しながら、そう言う。


苦エフ『"そんな事はない"って言ってやれ!』


青い男「そっ…!」


その通りだった。


でも言えなかった。




少女「バイバイ」


苦エフ『ダメだ!止めろ!』


自分を人間はという絶望を知った少女は、大粒の涙を流しながら、身を投げた。


青い男「まっ…!」


走っても到底間に合う距離ではなかった。


だが走る。


鉄柵から下を覗くと、下には血溜まりが出来始め、通勤前の人が数人集まり始めていた。


苦エフ『あぁーぁあ! …コレで"力"は手に入らなくなった』


青い男「くっ…!」


後悔が自分を襲う。


苦エフ『そりゃそうだ』


何故救う方を優先しなかったのか。


苦エフ『"力"が欲しいからだろ?』


だがもう遅い。


苦エフ『そう、"もう、遅い"』


後悔は後でしても仕方が無いのだ―


苦エフ『キミのせいさ』


そう、に教えて貰った事なのに、忘れてしまっていた。


苦エフ『キミが求めたせいさ "力"を』


何故か。


苦エフ『もっと求めなかったせいさ "力"を』


青い男「なんなんだよぉぉーーーーっ!!」


その後悔の念を、自分に問う様に、声を上げた。


苦エフ『"次"は上手くやりなよ』


丁度顔を出した日の出の心地良い光が、自分を照らしていた。



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