第十六話

二十三



―2017年 夏 深夜―


―あきる野 幽霊トンネル―



白の男「オイ! 中之あつゆき! ちゃんとナビしろ!」


中之『あっ…! え~と…! ハイー!』


そう言われ、川母利かわもりは焦りながらワタワタとした感じで応答する。


とても四十代…年上とは思えない…


白の男「チッ! つっかえねーなぁー中之は…!」


青い男「ホントッスよ…」


霊からの追撃を避けつつ述べる。


それは本当だった。


ナビもマトモに出来ないのに楽だけはしようとする。


実際、後方支援しかしたがらないのだ。


物覚えは悪いしやる気も出さない。


戦っているこちらがバカみたいだと感じるくらいだった。


今も、うーん…えっとぉー… と、困ったアピールを繰り返すばかりだった。


白の男「オイ! まだか!中之!」


青の男「早くして下さいよー!」


それが更に中之を焦らせるが、それをしても何も変化は無い。


白の男「…どーしよーもねーな…命掛かってんだぞ…!」


青い男「…もーいーですよ おれがやりましょうか?」


埒があかない。


自分がやった方が早い。


名乗り出る。


中之『え! ほんとですか! おねがいしm』


白の男「イヤ、ダメだ 中之がやれ でないと中之のタメになんねーだろ」


こういう時のレスポンスは光の速さでするが、それを遮られる。


中之『ハイ~…』


本気でへこんでいる様な声を出す四十代。


その態度に腹が立つ。


大した事はないかも知れないが、幽霊退治だ。


憑かれれば面倒。


それを川母利さんは解っていない。


それが透けて視得るので、気分が悪い。


中之『あ!わかりましたよ! 地縛霊です!飛び降り自殺の場所として、有名だったからだそうです!』


白の男「遅ぇーよ! よし! お前は祝詞のりとを唱えろ! 俺が止めを刺すからな!」


そう言って前に出る。


青い男「え?! あ、ハイハイ…!えーと…高天たかまの…はらに…えと、神留かむづまり…ます― 神魯岐かむろぎ神魯美かむろみの…」


白の男「あー!遅ぇー! もーいーわ!」


祝詞を待たず、そう言う。


白の男「臨・兵・闘・者・皆・陣・烈・在・前!」


唱えながら九字を切ると、その場が浄化されたのか、苦しそうな声を上げながら、霊が霧散する。


それを確認した後、ゆっくりとこちらに戻ってくる。


その顔は、明らかに不機嫌だった。


青い男「あ…済みませんでした…」


白の男「当たり前だバカ野郎 何の為にいつも練習しとけって言ってんだ? バカか…!」


青い男「…済みません」


白の男「命掛かってやってんだぞ?! 俺だけじゃねーか! お前等もちょっとは命掛けろよ!」


青い男「ハイ…」


その通りだ…ぐうの音も出ない…命懸けだ…


白の男「オイ!中之! 黙って誤魔化すな!」


中之『ハイ』


白の男「ハイじゃねーだろ! お前等揃って…命落としたいのか?!」


中之『スイマセン』


青い男「気を付けます…」


白の男「ちゃんとやっとけよ! 帰るぞ! 車出せ」


青い男「…ハイ」


結局は、その後も反省会だった。


自分はダメだと思うが、正直付いていくのが大変だ…とても高い所を目指していて…先輩黒い男はどうやって乗り切ったんだろう?


そう夢想していた。



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