補足 —異は始まり転じて終る—

―2016年1月2日(土) 正午過ぎ―


―都内某所―



薄暗い室内の中、ライトの光の下、そのド真ん中に置かれた机に向かい合う。


黒い男「さ、今回の件に関しての報告だ」


青い男「あいー」


と、やる気の無さそうな返答だが、気を抜いていない。


黒い男「―さ、今回の件に関してだが…反省は、在るな!」


断言され、ひるむ。


青い男「う゛…」


黒い男「ヴ…じゃねぇ 前から言ってるだろ 鍛えろって トレーニングしろ

なんだあの為体ていたらくは」


あの時の事を思い出す。

触手を殴り続けて息の上がったあの時…


青い男「…ハイ」


ぐうの音も出ない。

確かに中途半端だ。

そろそろ自分を見直す時期なのかもと内心思う。


黒い男「自分を見直す時期かもな」


被った。

だが、そんな事は口に出さず、そう思われている事に思惑をめぐらす。

…そんな自分の思考する問題よりも、今はあの時の疑問を解決する時だ。

それにより、自分の対応力を上げる為に。


青い男「結局、あのベルフェゴールってなんだったンスか?」


ザックリ言う。


黒い男「ザックリし過ぎだよ…」


それをザックリ断つ


青い男「スイマセン…なんであんなデカかったンスかね

フツーのイメージじゃ便所に居座るじじーでしょ」


黒い男「それはコラン・ド・プランシーの影響だな」


青い男「…誰スか?」


黒い男「19世紀フランスの小説家で、地獄の辞典てのを書いてる

お前の言ってるイメージはソレの印象が強いんだよ」


青い男「へぇー…じゃなんであんなクソデケェ化物に…」


黒い男「あぁ、実際は古代イスラエル東の地域の地方神でな、巨大な山の神=バアル・ペオルって名前なんだ」


青い男「へぇー あの空間もそんなカンジなンスかね」


黒い男「あそこは、ユウイチと魂が繋がった事によって現世に、

じーさん焔摩天を取り込んだことで具現化する力を得た、"異界"だな」


青い男「…フィクションスね」


荒唐無稽こうとうむけい過ぎて突っ込む。


黒い男「んや、閻魔じーさんに聞いたらそうだったんだって」


青い男「あ、聞いたンスか…」


相当フィクションぽい話しだったが、当人がそうだったと聞いて納得した。


黒い男「だから、ユウイチとの"縁"が切れたんで焦ったんだろ」


それだけじゃないだろうがな

と、心の中で呟く。


青い男「ほーん」


黒い男「表の目黒不動を元に、じーさん焔摩天から具現化する力を、ユウイチからイメージと維持する力を得たんだな」


青い男「でも、なんであんなに不吉なカンジでボロボロだったンスかね」


黒い男「清廉せいれんだからだな」


青い男「あぁ…! 確かに不動そのものを再現したら自分が居られないか…」


黒い男「そ あと、清廉な場所がけがされれば、元の世界と表裏ひょうりなら、尚のこと影響を受ける なんたって真裏まうらだからな」


青い男「はー… あ! あと、あの黒いちっちゃい龍!」


黒い男「倶利迦羅竜王ぐりからりゅうおうの事か アレは正に不動明王そのもの別の姿だ」


青い男「そうなンスか…?」


黒い男「不動明王の化身で、岩上で火炎に包まれた黒竜が剣に巻きついて、それをむ形で表される 色は金とも言われるがな

剣は外道の、竜は不動明王の智を表したものなんだ

口から吐き出す音は二万億のいかずち一時いっときに鳴り渡るほどの凄まじさで、これを聞いた魔性のものは滅びると言われている

剣に成った状態は、我が身のうちの迷いを打ち払いて空成くうなる形が剣を呑む竜となったもの

正に断空我だんくうがだ」


青い男「へぇー… てか今日オレ、はーとかへぇーしか言ってないモンー!」


黒い男「いつもじゃねぇか」


青い男「もっと知識付けよ…あ、で、ユウイチ君からは?」


黒い男「あー明後日会うぞ」


青い男「あ、そなンスか なら良かった 色々聞きたかったらしぃですし」


黒い男「ま、それ以外あるっぽいがな」


青い男「そなんスか?」


黒い男「取りえずは会ってみてかな お前は休んで次の依頼」


青い男「ハイッス」


その日の報告は、それで終わった。

雄一のその変化を前に。

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