―第四話―
十二
池から勢いよく下方向 ―出てきた側からすれば上― に二人は飛び出した。
青い男「ぅわわわわ!」
勢いよく飛び出したと思ったら、重力が逆に働き、その違和感にバランスを崩し、思わず声を上げてしまった。
黒い男「よっ」
それとは違ってバランス良く回転し、着地した。
黒い男「だらしねーなー」
青い男「急に押しといて何言ってンスか!」
そーゆーこと勢いでする人だから無茶苦茶なんだ。
そう思いつつクレームを述べる。
黒い男「…行くぞ」
意に介さず先に行こうとする。
青い男「くッ…!」
こーゆーときだけ無視かぃ!…と思ったが、自分もこの異常さに気付くと、直ぐ意識をシフトした。
青い男「…暗くない」
そう。夜の筈なのにそれ程暗くなく、雰囲気が異常だ。
何か…
表と全く雰囲気が違う。
黒い男「…空もな」
そう言われ、空を見上げると、
空の色は毒々しい紫に輝いている。
よく視ると、周囲の建造物が半壊している。
青い男「ここが…」
黒い男「裏不動だ」
―午後11時30分―
―泰叡山護國院 瀧泉寺 ―裏 目黒不動尊―
青い男「! …あれ!」
そう言う先には、多群雄一が立っていた。
丁度、参道に入ろうという所だった。
ドウンッ!
と、言う音と共に、黒い男は、手に持った"陽"を雄一に向かって撃っていた。
青い男「ッ…!と…」
そう言い耳を塞いでいた。
だが、撃たれた雄一は普通に歩いている。
青い男「?!…どういう…?」
黒い男「…
青い男「え?!」
弾は当たらなかった。幻の様に擦り抜けた。
雄一「無駄だ…」
そう口を開いた雄一は、此方を向かずに続けた。
雄一「私の肉体は此処に存在しない…貴様等がしている事は無駄だ…」
青い男「コイツ…?」
その違和感に思わず声が出た。
黒い男「今度は一般人に憑いたのか? ベルフェゴール」
知っていた様な声で続ける。
黒い男「貴様の今回の怠惰はなんだ?為すべき事を為さない事か? どうせ不信な心を持たせ、裏切らせたんだろう?」
雄一?「…誰だ?貴様…?」
流石に其処まで言われると、
黒い男「忘れたのか?お前も」
ハァと溜息をし、続ける。
黒い男「配下の悪魔がアホウなら、上もアホだな」
果てしなく
雄一?「何…?」
怒りを込めた声音だった。
だが、続ける。
黒い男「まぁ、十二年経ってるからなぁ アレから
あの時は一番最初に狩ったなぁ? だろ?
確か引き籠もりのクソニートに憑いたよなぁ」
雄一?「貴様…? あの時の男か…? まるで…?!」
あからさまな驚きが視て取れる。
そんなに意外な事だったのか。青い男は思う。
それは、黒い男の過去を言葉でしか聞いていない、いつもこうだという事しか知らない青い男には、"あの時"が、想像も出来なかった。
黒い男「時間が経ったんだよ お前も山羊頭と同じ事言うんだな」
右手に"力"を込める。
黒い男「解ってると思うが、オレの右手の"力"を込めればお前に当てる事も可能だ。
勿論銃でなくともお前の邪気を全て吸い尽くす事も可能だがな…」
引き金を引く。
ドウンッ!
強烈な音と共に雄一の足下を狙う。
雄一?「くっ…!」
流石に危機を感じたのか、雄一も距離を取り出す。
この男、遊んでいる―
あの腕の"能力"は、以前一度―十二年前に―見ている。
確かにやっかいなのだ。
あの、強力な"腕"は。
今の、実体の無い自分には為す術が無い。
早急に"
今の自分と同じ動きを"表"でもしているはず。
あの氏神の力を得たとはいえ、まだ完璧ではない。
"入り口"が必要だ。
何処に在る?
そうだ。
滝だ。
あの水場になら―
黒い男「
そう、青い男に指示を出す。
―午後11時45分―
―独鈷の滝 裏―
雄一?「よし…!」
そう言って、こちらに振り向き、勝ち誇った顔を見せる。
雄一?「これで私は望みを叶えられる…!」
そう言って独鈷の滝を覗き込み、池の中に手を突っ込んだ。そして、立っていた自分の手を掴んだ。
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