食べ歩きから始まる自称グルメの田口さん
誠二吾郎(まこじごろう)
第1話「JK、カエルを食す①」
「みのりーん、今日もゲテモノ食べに行くの?」
学校からの帰り道。声をかけてきたのは、
田口実里は学生鞄を手に持ちながら、軽く叩かれた右肩には気にもせずにすたすたと歩く。
「勝手についてくるなよ。あんたの相手をしている時間なんてないのよ」
歩くスピードも速足になってくる。
「ふふん、そんな事言って本当は嬉しいんでしょ。ツンデレいただきました」
「何がツンデレなのよ、そんなもんじゃないのよ。ついてくるんじゃないのよ」
田口実里は帰り道の通学路から外れ、商店街に入っていく。それに山口里奈もついていく。商店街は夕食時もあり、賑わいを見せている。できたての牛肉コロッケの匂いについお腹がなる。
「ねえねえ、みのりーん、コロッケできたてらしいよ。ちょっと買い食いしていこうよ」
「しません。そんな余裕はないのよ。ぐっさんは暇なのかしら?」
「うん。暇だよ。それよりみのりーんはどこに向かってるの?」
「暇人なのよ、まったく。はぁ~……ついてくりゃ分かるのよ。それより、ぐっさんはカエルは食べられるのかしら?」
田口実里は足を止めて、山口里奈にへそを向ける。山口里奈は首を傾げながら、頭にはハテナマークを出している。
「カエル?そんなもの食べたことはない!」
山口里奈はわき腹に手を置き、顎を上げ、ドヤ顔を見せた。田口実里は鼻で笑い、「ふーんなのよ」と言い、
「それじゃ着いたらびっくりするかもね、反応を楽しみにしてるかしら」
「え?本当にあのカエル?ねえ、ぐっさん、嘘よね?ねえ、ねえ」
山口里奈の問いかけに、田口実里はニヤリと微笑み、再び歩き出した。商店街の細い路地に入ると、
今は夕方時なだけあって、細い路地は薄気味悪い。女の子二人で出歩く場所ではない。
田口実里は突如、足を止める。突然止まったため、山口里奈はコツンと田口実里の背中に当たる。
田口実里は背中に当たった事には気にもせず、裏地の商店街には似つかない洋風の建物、玄関先には中華と書かれた看板、周囲を見渡しながら「ウン」と頷く。
「着いたわ。ここよ。ここにお目当ての
カランコロンと田口実里はお店のドアを開ける。店内は油っ気が強く、中華独特の香辛料の匂いが鼻につく。
寡黙の中年男性が椅子に座りながら新聞を読んでいる。チラリと二人を見たのち、「どうぞ」とだけ言い、再度新聞に目を向ける。
田口実里はいつもの事のように、適当な椅子に座る。山口里奈は田口実里に付いていくように同じ席に座る。
「みのりん、ここって怪しいお店じゃないの?商店街にこんなお店、初めて知ったわよ」
「ふん、知らなくて当然なのよ。女子高校生がこんな細い路地に来るはずないし。あ、店主、とっておきの二個ちょうだいなのよ!いつもの!」
田口実里は店主らしき新聞を読んでいた中年男性に大声で注文を叫んだ。注文が聞こえたのかカウンターの机に新聞をたたんでから置くと、厨房の中に入っていく。
山口里奈はきょろきょろと店内を見渡した。そんな様子を田口実里は見ながら、
「ここにメニュー表は無いのよ。常連さんしか来ないから、置いてないんだって。それにこんなところまできて普通のメニューなんて頼ませるわけないのよ。私が頼んだメニューでも心待ちにしてなさいなのよ」
「どうせカエルでしょ。心待ちを通り越して、心そこにあらずだよ」
山口里奈は大きなため息をする。そんな憂鬱な気分の山口里奈を見ながら、田口実里はニコニコとしている。
「へいおまち」
店主のおっさんは二つのお皿を持ってくる。二人が居る机に二つのお皿を置いた。お皿の中には、掌サイズの茹でたカエルが一匹ポンと置いてあるだけだった。
「うわー。もろカエルじゃん。ねえ、みのりん。これっておいしいの?」
「食べてみるのよ。そんな恐る恐るじゃ、せっかくの食べ物に失礼なのかしら」
田口実里は躊躇せずに、ガブリとかぶりつく。「んー」と言いながらカエルを堪能しているようだ。
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