31 第四の事件
私はその朝食が終わると、その疑いを確認する為にある部屋に向かった。ドアを開ける。上手い具合に鍵が開いている。その部屋に置かれている荷物を確認する。その中身を……。
しばらくして鞄の中から、私の疑いを証明するものを発見した。その瞬間、私は全てを悟ってしまった。
もしかしたら、これは事件とは関係のない事実かもしれない。しかし、それはとても偶然とは思えない。私は震えが収まらぬまま、すぐに他の荷物の確認を始めた。
そして、私はついにそれを見つけた。それは一枚の暗号文だった。
鼻の先にある岩の
北から数えて子丑寅
右の手
地獄ゆき
これは間違いなく三枚目の暗号だった。私はすぐにこの文章を携帯電話にメモする。
間違いない。この人が犯人だったんだ……。
私は焦燥を感じながら暗号を持って、その部屋から出た。そして、暗号文を地下室に隠そうとした。私が暗号文を持っていると、あの刑事に私が疑われてしまうからだ。
ところが、私が地下室に降りて、箪笥の引き出しを開けた瞬間だった。私の首筋に冷たいものが触る。私は驚きのあまり、ものが言えなくなった。私は震えながらも振り返る。
薄暗い地下室のことだ。犯人の姿はよく見えない。だけど、確かにそこに人影があった。そして、光る刀身が私の首をしっかりと捉えていた。
「やめて……」
私は震えた声を出した。それは自分でも驚くほど低い声だった……。
私が逃げようとすれば、すぐさま斬られるだろう。だから身動きがとれない。だんだんと状況を理解するにつれて、私の手足はがたがたと震え出した。
「殺さないで……」
次第に涙が込み上げてくる。希望はどんどん消えてゆく。無性に人生の終わりが悲しくなる。
「死にたくない……」
どこかで、この気持ちが伝わってくれるのではないか、と思った。ところが、かすかな明かりに照らされている犯人の目には、何の迷いもない。それは私をじっと見つめていた……。
その時、刀身が光った。腹部に信じられないほどの激痛が走る。血が煮えたぎるように熱く感じた。
私は叫び声を上げようとしたが、小さく呻き声をあげただけで、歯を食いしばって、床に倒れた。
腹部から血が噴き出して、私の体は赤く染まっていった。
本当に殺される……!
私は気が遠くなってゆくのを感じた。全身の力が抜けてゆく。もう何もできない。悲しみはどこかへ消えしまった。それよりも今、自分に起こっていることに無我夢中だった。
私は低い呻き声を上げた。ひどい目眩が私を襲われ、とても犯人に反撃をすることはできない。
うつ伏せのまま、私は悶絶し、このまま冷たくなるのだ……。冷たくなってしまうのだ!
薄れてゆく感覚の中で、私には犯人の背中が見えていた。犯人は今、後ろを向いている。
見れば、目の前には先ほどの暗号文が落ちていた。私は腹部を押さえていた手をその暗号文に差し伸べた。
このことを誰かに伝えなくてはならない……。
この危険を知らせないと……。
私は震える手で、血文字を書いた。
駄目だ……。だんだん暗くなってきた。もう何が何だか分からない。目眩が、目眩が、目眩が。
その時、もう一度、私の首元で刀身が光った。
ああ……これが私の最期な…の………………。
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