NENE
usagi
第1話 NENE「プロローグ」
都心にある築35年の中古マンションは、床も壁も白色にリノベーションされ、まるで新築のようだった。ベランダの窓を全開にすると、太陽の光が部屋床や壁で反射し、キラキラと輝いた。
私は部屋に閉じこもり、本を読んだり寝そべったり、日中何もしないで過ごすのが大好きだった。
今日もいい天気だった。
梅雨入り前で暑い日が増えてはきたものの、初夏の太陽と風は心地がよかった。
特にすることのない休日のような気分だった。
本当は校了の前日だったが、、、。
ベッド横の小さなテーブルの上でパソコンを打つ手を止めて、隣を見た。
見ると、寧々が小さく寝息を立てていた。
彼女は本当によく寝る子で、手がかからずに助かっていた。
透き通るように細く、やわらかい髪の毛をゆっくりと2回撫でた。
昼夜仕事に追われる生活に耐えかねて、出版社を退社してからは、付き合いのあるクライアントから直接仕事をもらうようになった。
実入りは減ったが、生活できるだけのお金はなんとか確保できたので、その暮らしには満足していた。今さらあの世界には戻れないと思っていた。退社したのは激務からではなく、寧々が私のおなかに現れたことが一番の理由だったが。
今日みたいな校了間際のタイミングだと、子供が大人しく寝てくれるのは本当にありがたかった。周りの友達から聞く限りでは、男の子は非常に手がかかるということだったので、きっと自分の子供が女の子で良かったと思うが、、、世の中の女の子がみんなおとなしいわけではないだろうけど。寧々には助けられてばかりだった。
「とにかく。この校了が終わったらそろそろ動き始めないと、、、。」
私は改めて思った。
大概のことは気にしない性格ではあったが、さすがに娘の父親が誰かわからないなんて状況からは抜け出したくなった。
寧々が生まれる2カ月ほど前、私は勇気を出してお腹が大きくなった状態で実家に帰った。知らないうちに娘が妊娠し、その相手が誰かも記憶にないと言えば、ショックを受けるのは無理もなかった。親にとって優等生だったはずの私は、親不幸な娘になってしまった。
いまさらではあったが、ようやく私は寧々の父親探しを始めた、、、。
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