ある人々のエピローグ

谷出 裕樹

一人目

 夢を見た。




「あ、杏莉ちゃん教科書忘れた?」


「わードンマイw」


「お”い”杏”莉”ち”ゃ”ん”に”そ”ん”な”こ”と”言”う”な”!!」


「わぁあビックリしたぁ!!!!?」


「相変わらずみつきは…過保護の親みたいじゃん」


「ふふんだって杏莉ちゃん可愛いんだもんんー」


「おーまぁ杏莉ちゃんってゆう先輩と同じくらい可愛いよね。」



「あ゛? 杏莉ちゃんの方が可愛いだろ??!?!」



「まぁそこには全力で同意するけど」



「同意するんかい…」




 そんな、昔の、懐しい光景。

 笑って、はしゃいで、時には探検もした、かけがえのない仲間の、そんな光景。




 —————あんり、




 近くからの声で潜っていた意識が持ち上がる。

 名残惜しく目を開けると横には彼がいた。


「おはよ」


「おはよ」



 彼が心のこもった口づけを額に落とす。



「もー杏莉全然起きないじゃん」


「ごめんごめん、夢、かな? 分からないけど多分体が起きたくなかったんだよ!」


「んーそれならしょうがない、のか?」



 今日は二人揃っての久しぶりな休日。


 上半身を起こして側のカーテンを開けると朝日の光が露になって入ってくる。



 暫く裸の自分を充電するかのように日の露に当たっていたら

 後ろから彼が優しく包み込んできた。




「ねぇ、杏莉。」


「んー?」



「…もうちょっと寝る?」



「……いいよ」



「ねぇ杏莉」



「…好きだよ。」



「ん…私も」



「大好きだよ…」






……」










 ———おそらく彼は知ることはないだろう。




 私があの日珍しく遅く帰った訳を。



 先輩が急にに行ってしまった訳を。



 天秤にかけられていた私が幸せになれた訳を。





「今日の朝御飯はー…?」



「ハンバーグかな」



「またか…」


「んーそういえばあのハンバーグめっちゃ美味いよな、何で?」


「なんかスゲー調理法でも習った?」






「ふふふ…」









 ーーやっぱり 1から からかなぁ。








「…あ、お腹すいたからって冷蔵庫開けちゃダメだよ?」





「材料がいっぱい入っててなんか恥ずかしいし見られたくないから…」




「んーどうせパスコードロックかかってるから開けませんよーだ!」





「まぁそうなんだけどねw」








あぁあ、幸せだな。




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