フィロソフィア
冠楽A
花の散り際に零した
東の空に昇ってきた太陽は世界を起こして回り、木々の輪郭を明瞭にしていく。涙を流した君も、明るく照らされている。白い君の右側には影が差し、左側は朝日を照り返している。その左側の腕から、花が。君が好きだったあの花が、咲き始めている。
ああ、そうなのか。
僕は気が付いてしまう。朝日をたっぷり浴びて咲いたその花は、皮肉にも今まで見てきた花の中でも群を抜いて、美しい。気が付きたくはなかった。前にも感じたある感情が押し寄せてくる。数日前に落とした涙の感覚を思い出す。大きな絶望だ。
かすんでいく意識の中、愛しい君に手を伸ばした。さし伸ばした腕は君に触れることなく、力なく落ちていく。君に届きはしない。
僕らが持ってしまったこの力は、いや、病気は、留まることを知らず、また美しく僕らを飾ってしまった。僕が死んでも彼女の病気は治らなかったのだ。つまり、それは。
好きだったのは最初から僕だけだったのだ。
生まれて初めて涙を流した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます