フィロソフィア

冠楽A

花の散り際に零した

 東の空に昇ってきた太陽は世界を起こして回り、木々の輪郭を明瞭にしていく。涙を流した君も、明るく照らされている。白い君の右側には影が差し、左側は朝日を照り返している。その左側の腕から、花が。君が好きだったあの花が、咲き始めている。

 ああ、そうなのか。

 僕は気が付いてしまう。朝日をたっぷり浴びて咲いたその花は、皮肉にも今まで見てきた花の中でも群を抜いて、美しい。気が付きたくはなかった。前にも感じたある感情が押し寄せてくる。数日前に落とした涙の感覚を思い出す。大きな絶望だ。

 かすんでいく意識の中、愛しい君に手を伸ばした。さし伸ばした腕は君に触れることなく、力なく落ちていく。君に届きはしない。

 僕らが持ってしまったこの力は、いや、病気は、留まることを知らず、また美しく僕らを飾ってしまった。僕が死んでも彼女の病気は治らなかったのだ。つまり、それは。


 好きだったのは最初から僕だけだったのだ。

 

 生まれて初めて涙を流した。

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