3sec 剣と指輪



どこだ…ここは?


僕は今まで何をしていた…?



 昨日の晩に数Ⅰの宿題を終わらせて今朝は英単語の早朝テストがあるからその勉強もちょっとやって、それから…。



そうだ、目が覚めたら女の子に会ったんだ。





 チコリス――。その名を忘れないでと言っていた少女。

顔立ちは西洋人風な凛々しい顔立ち。うすピンクの髪の毛に緑がかったきれいな目だった。


僕はそれから手を取られて心がなんとかとか……なんだっけ……。

なんだか頭も視界もぼやけて、考えがまとまらない。





そうだよ、証…を見つければいいんだ、でも……。


――暗くて何も見えないなぁ。どっちいけばいいんだ?立て看板でも用意しておいてくれたらいいのに。




 今のところ地に足は付いている。僕は出口と証、どちらかを見つけるためにも歩くことにした。

数秒か数分なのかはわからない、でも少し歩くといくつかの光が見えてきた。




右手に青い光、真ん中にピンク色の光、左には黄色い光。

いつの間にか後ろにも赤と紫の光が輝いて見える。



――どっちにいけばいい?



そう思うと声が聞こえてきた。




―――わたしとの絆をつなぐため、わたしのところへ……。



僕は声の主を呼んだ。


「チコリスさん!どこにいるの!?」


その言葉に返事はない。




――なるようになるか。こんなふしぎ空間で考えても仕方ない、当てずっぽうで行こう。


僕は彼女の髪色を感じるピンクの光を目指して歩いた。



光の元へたどり着けば、ピンク色の扉が柔らかな光を放っていた。



この先に、彼女の言う証がある。なぜかそう確信できた。

僕は迷うことなく目の前の輝く扉を開ける。



 なんだ……ここは…?


 扉の先にあったのは一本の大樹だ。その大樹と僕のいるこの空間を囲むようにして、超高層ビルのように果てしなく高い四枚の無機質な壁がそそり立っている。

見上げた空にはどんよりとした灰色の雲が四角く見える。



――ここに証が?



僕は唯一色味のある中央の大樹へと向かった。



近づいてみるとその大樹には妙なものが2つ見えた。



ひとつは大樹を横からナナメに貫く、白く発光する剣。

もうひとつは、木の幹に空いた穴の中に見える、仄かなピンク色の光。



扉はピンク色に光っていた。ならばあのピンクの光が証なのか?

だとすればあの剣はなんなんだろう……。



何かに引き寄せられるかのように僕は剣をよく見てみたい気持ちに駆られる。



 一歩、また一歩と剣に近づくたび、剣をよく見たい、手に取ってみてみたい、という気持ちが強くなってくる。



 剣を手に取ろうとした時、ちら、と視界の端を、羽の生えた桃色の妖精が横切った気がした。

とたんに、剣へ向かっていた気持ちが消え失せる。




――僕はなんで、なんであんなにこの剣が欲しかったんだろう。

そこから僕はまっすぐピンクの光の元へ視線を移した。




光の中には銀色の指輪。これが……証?




 僕が指輪を手に取ろうとゆっくりと手を伸ばすと、手先が指輪に触れた途端、

もうおなじみになってきた脱力感とともに、目の前が真っ暗になった。





(続く)





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