『すきあり!』

やましん(テンパー)

『すきあり!』

 生まれた時に、全ての人は『超超超高性能チップ』を体に埋め込まれるので、いま、どこにいるのか、いま、なにをやってるのか、どういう健康状態なのか。


 すべて、政府には分かるのです。


 電源は、身体から供給されるので、一生止まることはありませんが、雷さまに打たれたりして、万が一停止したら、それもすぐにわかるので、公費で交換されますから心配は要りません。


 だから、たとえば、ひとり暮らしのご老人が、突如体調不調になっても、ただちに救急隊がかけつけますから、孤独死は非常に少なくなります。


 もちろん、家じゅうに、カメラやマイクが設置されていて、常時警戒してくれていますから、もし、怪獣さんが襲ってきても、すぐに軍隊がかけつけてくれます。


 メールもお手紙も、しっかり校閲してくれるので、過ちを犯す前に、修正が出来ます。


 お化粧も、どこがよくないか、どうしたらよいか、直ぐに教えてくれます。


 おいしいお料理のレシピや、調理の仕方も、すぐにわかります。


 めんどくさい行政手続きも、ほとんど自宅ですぐできます。


 お仕事がなくなれば、あっというまに見つけてくれます。


 人類の長年の夢だった、多角的な需要と供給の完全一致に、かなり近い状態になりました。


 ただし、自然だけは、まだ克服しきれていません。

 

 これが、人類最後の課題となっています。



 危ない病気の兆候があれば、早期に病院が診てくれます。


 強盗や犯罪に走る人は、まずいません。


 やろうとしたら、その場でわかってしまいます。


 お手洗いやお風呂で、つい政府や、偉い人の悪口を言ったら、すぐに『教習所』に入れてくれて、悪い考えを治してくれます。


 悩んだり、何かを企んだりする必要は、もうありません。


 もしも、万が一、お酒を飲んだりして喧嘩が始まると、チップが双方をあっという間に仲裁してくれます。

 

 そういうわけで、この『完全社会』では、国民は、みな幸福なのです。


 

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 あるひ、掃除のおじさんが、たまたま地下で見つけた、古~~~い『小屋』にあった、『超超超スーパーコンピューター』の、最初期の部分のコンセントを、気が付かないまま、モップにひっかけて、抜いてしまいました。


 だれも、そのような機械の存在は知りませんでした。


 でも、全部、止まりました。


 なぜだか、分からないけど、文明は終わりました。



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『すきあり!』 やましん(テンパー) @yamashin-2

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