第7話 for you
とある横浜の港公園、ここは停泊する船があり、昔は周遊クルーズなどもしていた。未樹と亜沙子は制服のままベンチで腰掛ける。
この公園の鳩はすっかり餌付けされており、人から逃げたりはしない。
「ねぇ、未樹。あんた友達が少ないよね」
「そうだね!生きたいように生きてるからね!
でも寂しくないよ!亜沙子もいるしね!」
未樹は手を拡げると鳩が乗った。
「あたしがもしもフレンドアプリ<YOU>だったらどうするの?」
アプリ<YOU>とは仮想空間上に友達が作れるアプリ。この時代の多くの老若男女が使っており、自殺者数を大幅に減らしたアプリ。開発者は雑貨舞子。
「それはないよ! 私がそんなアプリ使うわけないじゃん」
「でもさ、あのアプリのおかげで、いじめが減ったし自殺者も減ったじゃん」
「そうかもしれないけど、あのアプリ自体が友達減らすからだめなんだよ!
理想の友達が作れるってことは、現実の友達作ろうとしなくなるじゃん!
現実の友達を作れるようになるアプリならわかるけど」
「そうだね、未樹流にいえば電子の友達を作るほど現実の友達が減るっていう」
「そうなんだよ!自己中心的な人間しか作れなくなるってことだから、20年後、30年後の世の中がどんな世の中になるか……雑貨舞子は、私がいつか倒さないと」
「はは、雑貨は確かに未樹の宿敵ポジかもね、ああでも物騒なことはやめてね」
未樹、ベンチから立ち上がる。手のひらの鳩はばさばさと翼を広げどこかへいった。
「そんなことはしないよ! ただあいつの研究所をすべて破壊するだけ! 再生すらもさせない!」
「それは、国のテロリストとして指名手配されちゃうよ」
「じゃあどうすればいいの?」
「んー。気付かせることなんじゃない? アプリのデメリットを」
「……この時代の人たちが気づくとは思えない!」
「まあ、そう言わずに地道に焦らず気づかせていこうよ」
「それを考えると頭痛くなるわ、クラスメイトですら全くわかってくれない
し」
亜沙子だまって、アプリ<YOU>を起動する。
立体上に映し出された女の子は、未樹や亜沙子の年齢ぐらいで、決意に篭っていた。
「やってやろうじゃないの!」
フレンドアプリの声だけが潮風と共にどこかへ去っていった。
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