一言で、素晴らしい作品でした。実はかなり前から気になっており、読了後、ホラー独特のじんわりと腹の底に溜まるような黒い余韻を噛み締めながら、この作品が何を伝えたかったのか、ずっと考えていました。”また鎖に繋がれたい”「鎖」というのが何を指しているのか、きっとこの言葉には色んな色んな意味が込められていて、読む人一人ひとりの瞳に、違った色で映るのでしょう。ただ恐怖を与えるだけでなく、その奥に伝えたいメッセージがある。そこが、ただのホラーとは違う紅林さんの魅力であるように感じました。
精神的にくる素晴らしい恐怖です。鎖というキーワードを最高に恐ろしくおぞましく扱っていて、その巧みな手腕に圧巻させられます。ただ怖いだけでなく気持ちの悪さも感じられ、精神的な圧迫感も与えてくるホラーです。人が歪んでいく生々しさは読みながら不意に自分自身の感覚すら曖昧にさせます。読み終えたあとも胸に奇異なシコリが残り、薄ら寒い余韻に気持ちがそわそわします。ここまで精神的に残るお話は本当にすごいと感動しました。人を選ぶ作品だとは思いますが、私は出会えて嬉しかったです。
彼女の部屋に初めて入った主人公が見たのは、奥の部屋で鎖に繋がれて暴れまわる男。それは一体誰なのか、なぜ彼女の部屋に繋がれているのか。そして主人公の身に降りかかる悲惨な運命とは。先の展開が読めず、毎回ぞっとさせられる素晴らしいホラー作品です。