第5話 実は困っていた私
上京して夢を叶えたかったけど、
そんな事ができる人間は、『一握りだ』と知るのに
そこまで時間はかからなかった。
だが、啖呵きって家を飛び出してきたのだから
おめおめと帰るわけにも行かず、
それでも何とかやり繰りして生活してきた・・・
深夜、コンビニで晩御飯を買って
ボロアパートに戻る。
今日はちょっと言い過ぎたかな・・・
鷲尾君の事が脳裏に浮かぶ。
人間、本当の事を言われると腹を立てるというが
我ながら情けない。
なぜなら、実は私はとっても困っていたのだ・・・
あんなキツイ言い方したらもう来ないよね
ちょっと涙目になる。
どんなつながりも無理やり切ってしまう、これは悪い癖なのかもしれない。
でも、今更、後悔しても、もう遅い
切り替えよう、食べて寝て、すべてを忘れる
そうしよう
角を曲がる。
あれ?ウチのアパートが存在しないように見えるんだけど・・・
もしかして、ボロ屋だったから、風でパタパタ倒れたとか?
はは、そんなまさか・・・
その後、なんとか連絡が取れた大家さんに確認したら
「あんた、ウチのアパートは耐震強度が足りないから『取り壊す』って、何度も連絡しんべさぁ」
う、嘘でしょ
$$$
次の日、鷲尾は、死んだような目で仕事に取り組む。
(おい、どうしたんだ、鷲尾の奴)
(昨日、あのキャバ嬢に告白しに行って、玉砕したってさ)
(うわーホントに、やっっちゃったんだ)
課長は無言で立ち上がり、鷲尾の方へ行く。
「『若い』っていいね!」
うわあああああ
その言葉に鷲尾は昨日の事を思い出してのた打ち回る。
(・・・鬼か・・・)
その日、仕事は全く捗らず、深夜まで残業することになる。
最悪の気分で上を向く気力さえ起こらない。
・・・鷲尾君・・・
あれ、アパートの廊下に誰かいるな、お隣さんかな、軽く頭下げて通り過ぎよう・・・
あの・・・鷲尾君・・・
(ん、誰か俺の事呼んでる?)
顔をあげる。そこに居たのは、昔俺が好きだった同級生だった。
「困ってないけど、今夜泊めてくれない?」
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