目の前の魔法陣と男に巻き込まれて

葵桜

ストーカー野郎がうざい

学校の授業が終わりのチャイムとともに終了を告げる。

放課後の夕暮れ時に差し掛かる時間。


かったりー、面倒くさいなぁーと思っていそうな、やる気がなさそうに疲れた顔をしている青年。

気にしないのか寝癖であちこちが跳ね、襟足、もみあげ、前髪、しばらく髪を切っていないのが丸わかりの長さをした、なんとも言えない不潔にも見える黒髪。


帰るためなのか学校の廊下を昇降口に向かい、ゆらゆらと適当に歩いている感じがますますやる気のなさを感じる。

しかし決してフラフラとはしていなかった。








「ねえ!

一緒に帰ろう?

いつも一人で帰ってるよね?」



そう!俺は今学校のアイドル、学園一のイケメン!!














と言いたいが、そんなやる気がなく廊下をゆらゆらと歩いている、もっさい青年がこの俺だった。


そんな遠巻きに見られている中、学園一のイケメンと言う条件がパーフェクトな、クラスメイトに唐突に話しかけられていた。



「...。

なんで?

お前いつもハーレムじゃん?

女子のとこ行ってこいよ。」



やる気がないもさっとしている青年は当たり前のように断る。

断るというよりは拒否をしていた。



「えー?

なんで?

だってあの女の子は友達だよ!

男の友達も欲しいから!

男ってみんな僕を避けるから、君なら良いかなって!」



はい。

意味不明です。

友達ぃ~??

あの女子のどこがぁ、友達に見えるんだ!!


目が怖いよ、どう考えても俺にしつこく話しかけてくる、この学園のアイドル君を狙ってる目だ!眼科行け!いや、心の病気か?それならば心療内科をすすめるぞ。


中には、根暗×学園アイドル、いや、学園アイドル×根暗、とか言ってるやついるけど。

同士です。

だが出来ればそちらに行きたい。


てかな、こんなのには間違っても恋しない!腐女子さんよぉー。

魅力がさっぱり分からん。





略して学園アイドル君が未だもっさい青年に話しかけている間、もっさい青年は別の事を考えていた。


それを目にした廊下にいた制服を着た男子は、遠巻きに眺めつもっさい青年に憐れみの視線を向けている状況だ。

中には羨ましがっている人も、恨みがましく見ている人もいるようだ。


出来れば変わってくれねーかと言いたげな表情で、マジダルいわぁと言い出す始末である。



「ねえ!

根暗君ぼーっとして大丈夫?早く一緒に帰ろう?」



しつこい学園アイドル君に完敗した、もっさい青年こと学園アイドルくん、に付けられたあだ名は根暗。

そして根暗君の方が結局折れ、学園アイドル君と一緒に住宅街の人気のない道路を歩く。



「根暗君はなんで根暗なの?」



イヤイヤ一緒に帰っていると、学園アイドル君が失礼な事を聞いている。



え...、君が勝手に呼んでくるあだ名だろう...?


顔だけイケメンとはこの事か....。




流石に自覚している根暗君すらも聞きながら心でキレるばかりだ。



また意味不明な質問かよ。

そして俺の名前は根暗じゃなくて根倉!!

てのは冗談として、名前はこいつに教えたくないからスルーしよう。



「根暗っていうわけではない。

髪も前髪も長いのは家出るの面倒だし?ただそれだけ。」



根暗君は開き直ったのか、自慢にもならないことを、自慢するかのように、堂々と言ってのける。



「うーん?分からないなぁ。

とりあえず根暗ってわけではないんだねー?」



学園アイドル君は、聞いたにもかかわらず、興味なさそうに返事をする。


が、しかし学園アイドル君になぜか壁ドンされてる。


根暗君の表情が、性別はどうでも良いけど、いくら学園アイドル君が人気で、イケメンだとしても、タイプでもないし、壁ドンなんかされたくない、と思っている不機嫌面だ。



学園アイドル君が根暗君を壁ドンして数分がたった。


五分くらい経ったような気がするけど、なぜずっと壁ドン?

しっかし、なんか数分前から学園アイドル君の後ろに魔法陣が見えるなぁ...。


きっと気のせいだな。

こいつがキモい体制でずっと話しかけてくるからとうとう幻覚まで...。ハハ!



根暗君は現実逃避をしていると、学園アイドル君からなぜか聞き捨てならない言葉が飛んできた。



「なあ?

俺達ってもう友達だよね?」



うん。聞き捨てならないが、聞き流そう。

オレハナニモキイテナイー。キコエナイー。



思い込んだ通りに根暗君は、学園アイドル君に言われた事を聞き流し、現実逃避の一貫として、ずっと気になっていた事を質問をする。



「な、なあ。

それよりもさ、学園アイドル君の後ろにある魔法陣は何?

君、勇者か何かなのか?

ちょっと入ってみろよ。」



根暗君は、学園アイドル君の後ろにある魔法陣の事を、指さしながら聞く。



「は?

魔法陣?......。


なんだこりゃ!」



学園アイドル君は#正確__キャラ__#が変わるくらい驚いた反応をするが、興味がない反応を顔に出す前に学園アイドル君が雷を落とす。



「入ってみよう。

根暗君も一緒にね!!」



俺的には勇者は嫌だが、異世界ライフをしてみたい気もしなくもない。



根暗君が考えていると、学園アイドル君が根暗君の腕を引っ張ってきたので、ドンッ!と押してたそのはずみで、根暗君の袖を掴んだままだった学園アイドル君に、引っ張られながら魔法陣に落ちていった。

もちろん根暗君が、完全に魔法陣に入りきるまで離さないで...。



「これ入ったらずっと、あっちの世界で生きていかなきゃいけないのか?

まあ、異世界ライフ上等!

学園アイドル君は城に召喚されて、俺は森に召喚されますように!てことで!

俺いっきまぁーす!!」



巻き込まれていく可哀想な根暗君。

自分で言ってて虚しいな。笑いー。



そう考えながらも、結局そのまま魔法陣に吸い込まれるように消えていった。

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