第2話
「じゃ、お金はしっかり口座にいれとくから!またねー!」
優しい兄ができると考えていた私の心はあっけなく砕け散った。あんなに大好きだったお母さんと新しいお父さんが乗った車が憎くてしょうがなかった。なんで置いていくの?お母さん。
「はぁ...可愛い妹ができると思ってたらこれか。」
「これとはなによ!私だってあんたがお兄ちゃんとかこっちから願い下げだわ!」
家に到着して早々喧嘩をしてしまう。
敬太の家は部屋数は少ないものの、リビングはとても大きかった。1階建てだが地下室があるらしい。
「もう関わらないでよ。私音楽聞くから。」
そう言って、自分のリュックからタブレットとヘッドホンを取り出してYouTub●を見だす。
それを見て敬太も携帯を触りだし、お互い一切会話しない時間が続いた。
2時間ほど経った頃だろうか。喉が乾いたので水を飲もうとキッチンに向かった。敬太が口を動かしていたが電話でもしているのだろうと気にも留めなかった。
雪が敬太の近くを通ろうとした時。敬太が雪の腕を掴んで自分の座っているソファーに座らせた。昔ならひっぱられてもびくともしなかった雪だが、もう力では敬太に勝てないことが目に見えて分かった瞬間だった。
雪はヘッドホンを外して
「なに?」
と言った。
「皆~!この子が俺の新しい妹だよ~!」
机にはスマホが置かれており、スマホは配信アプリが開かれていた。内カメラが起動されていて、視聴者にその映像がリアルタイムで表示される仕組みの王道アプリだ。
『えっかわいいw』
『俺と付き合いませんか』
『うやむ~にこんな可愛い妹が...神様は不公平だ』
画面には続々とコメントが映されていく。
「ちょっと敬t」
名前を呼ぼうとすると突然口を塞がれ
「本名はまずいぞ。お兄ちゃんって呼べよ」
と言われた。
「お前をお兄ちゃんなんか呼びたくねえわ!」
と叫びたい気持ちを飲み込んで
「なんで配信に私がでないといけないの?」
と聞いた。
「なんでって...紹介するため?」
「ほんとやめてよ。もういいから。」
呆れたようにキッチンに向かう。
『うやむ~妹の名前教えて~!』
『自己紹介してよ!』
配信にはたくさんのコメントが来る。自己紹介もその一つだ。
「おい~!自己紹介してほしいってよ!」
また帰るときに捕まった。ずっと腕を捕まれているので今回は逃げ出すことはできないだろう。
「ほら。自己紹介。」
敬太は試すような笑みを浮かべ言った。
負けず嫌いな雪は一回深く息を吸い込んでから夢中で話し出す。
「こんにちは~!うやむ~の妹の『にゃ~む』と申します!これからうやむ~の配信に時々移り混むと思いますがよろしくです!」
『よろしく~!』
『にゃ~む可愛すぎる問題』
「桜さん可愛すぎる問題ってえ~私かわいくなんかないよ」
『なんかにゃ~むって配信なれしてる感じする...』
「気がするだけだよ!」
「っええええええええええええええええ!?」
ぽんぽん視聴者と会話をしていく雪をよそに、敬太はなぜ雪がこんなにコミュ力が高いのか考えていた。
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