私が有名配信者であることは誰も知らない

漣優

第1話

「え、今なんて?」

「だから、お母さん再婚するの。応援してくれる?」

私は新城雪しんじょうゆき17歳。どこにでもいる普通の女の子だよ。私のお父さんは既に亡くなっていて物心ついた頃からお母さんと二人きりの生活を送ってきた。私を育てる為にお母さんは毎朝早くに出勤して夜遅くに帰ってくる。ずっと大変そうなお母さんを見てきたから一人でしっかり生きようと決心して早12年。一向に一人で生きれる気がしない。けどお母さんが好きな人を見つけて結婚したいのならお母さんを尊重したい。だから私はすぐに

「うんっ!応援する!」

と答えた。お母さんはホッとした表情で笑った。お母さんが笑った顔を見るのは久しぶりだったから嬉しかった。

「そうそう。相手側に同い年の男の子がいるの。良かったわね。お兄ちゃん欲しがってたでしょ?」

「うん!嬉しい!!」

私は一人っ子だったから優しいお兄ちゃんが欲しかった。お母さんも幸せになれて私も嬉しいって凄く良いじゃん。

「明日駅前のカフェで顔合わせだからしっかり起きなさいよ」

私は実はロングスリーパーで、平均12時間寝ないとしっかり起きれない。このせいで部活もやめて家に帰ったら家事をさっさと終わらせて寝る生活を送ってきた。病院も行かないとな……。

私はすぐにベッドに入った。ワクワクしてたからすぐに寝れないかと思ったけど案外眠れた。明日が楽しみだな。

「雪ー!起きてるー??」

「起きてる!」

タンスから服を引っ張り出しながら答える。いつもは制服で私服を着る機会がないからどれを着ればいいのかわからない。しびれをきらしたお母さんが雪の部屋にやってきた。部屋に散乱した服を見て察したようでその中からスカートとトレーナーを選んで雪に手渡す。

「早くしなさい!時間無いよ!」

お母さんと一緒に下に降りていく。何故かトランクが車に積まれていたけど気にしない。いつもの事だ。

出発時刻になって車に乗り込む。お母さんはうきうきして楽しそうだけど私は緊張してきて縮こまっていた。

「雪。緊張しなくていいのよ?」

お母さんが助け舟をだすが答えない。大丈夫かな。

ついにカフェに着いた。カフェの一番奥の個室に通される。何度かこのカフェに来たことあるけどこんな場所があることは知らなかった。まだ相手側は来ていないようで安心する。いや安心したらダメでしょ。考えているうちにこちらに向かってくる足音が聞こえる。

「失礼します。あ、舞子まいこさん。遅くなってすみません。」

背が高い男の人が入ってきた。イケメンで爽やかな人だった。お母さんも笑って楽しそう。この人ならお父さんと呼べそうだなと思った。お父さんの方を見ているとお父さんの後ろから

「あっ」

と声がした。声がした方を向くと早乙女敬太さおとめけいたがいた。敬太は小学校から高校まで一緒の腐れ縁だ。

「なんで雪がいるんだよ」

「それはこっちのセリフでしょ」

仲が悪いわけではないけど、会ったらいつもこんな感じだ。お父さんが敬太をなだめて座らせる。

「俺は早乙女広樹さおとめひろき。今年で42歳。仕事は銀行の支店長をしているよ。雪ちゃん。これからよろしくね」

お父さんが自己紹介をする。ずっと敬太と兄妹になった実感がなくてぼーっとしていた。どう接したらいいんだろう。接し方は変えちゃダメか?でも自然に変わっちゃうよね。どうしたらいいんだろう。

「雪ちゃんはどう思う?」

「えっ」

お父さんがふいに話を振る。それまで全然聞いてなかったもんだからびっくりしてきょろきょろみわたした。お母さんにアイコンタクトをしてみるが全然察してくれない。

「おい雪。お前もしかして話聞いてなかっただろ。」

敬太が言うと広樹さんは豪快に笑って

「そりゃ急に家族が増えてびっくりしてる子にハネムーンの話なんか聞いてるわけないよな」

と言った。どうやらハネムーンに行く話をしていたらしい。

「雪ちゃんさ。敬太とちょっとだけ暮らすことできるか?」

広樹さんは雪の目を見つめながら言う。

「えっまあ少しくらいなら大丈夫ですけど...」

「今日家帰ったらすぐ行ってくるわ。帰る日はまだわからないけど1年後くらいかしらね~。雪なら大丈夫よ!成長した姿を見せてちょうだいね!」

「えっ。ええええええええええええええええ!?」

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