第124鱗目:夕飯準備!龍娘!

「「つーかーれーたー!」」


 風鈴の音が響く座敷で隆継ととらちゃんが疲れ果てた声を上げたのを聞き、僕が時計に目をやると壁にかけてある時計の針は6時半を刺していた。


 もう勉強初めてから2時間か、時間が経つのって速いなぁ…………さて、そろそろ晩御飯作り始めた方がいい時間だし、それに────


「隆継ととらちゃんも限界みたいだし、ここら辺で今日の勉強は終わろうか。さーちゃん達もそれでいい?」


「この調子なら明日の午前中には終わりそうだし、アタシは終わっても大丈夫よ。鈴と武玄くんはどう?」


「僕もそんな感じ、思ったよりも宿題進んだよー」


「俺もだね、今日はいつもより遥かに宿題が捗ったよ。それもこれも理数特化がいるからだな」


「そうね、ありがとう鈴」


「あうあ〜2人ともやめて〜〜」


 2人の伸ばしてきた腕に頭をわしゃわしゃと撫でられながらそう言われ、僕はキュッと目を閉じたまま照れ臭くて少し顔が赤くする。


 頭を撫でられるのは好きだけど……さーちゃんはともかく、むーさんに撫でられる事ってないからなんか恥ずかしい!というか照れくさい!

 でもお父さんに撫でられるってこんな感じなのかなぁ。


「なぁ朱雀峯さん」


「なにたかくん」


「あの3人ってやっぱり人じゃないわ」


「わかる」


「ちゃんと宿題やってただけで……少なくともさーちゃんとむーさんは間違いなく完璧に寸分の隙もなく人間だよ。さっ、今日は晩御飯沢山作らなきゃだから皆手伝ってね」


「「「「はーい」」」」


 頭を撫でられている僕を他所に、そんな話をしていた2人に僕がツッコミを入れてから皆にそう言うと、皆は快く返事をしてくれた。


 ーーーーーーーーーー


「うぅ〜〜……目に染みるぅ〜!」


「虎白ちゃんは玉ねぎ相手にノックアウトかー」


「だって目に染みるんですもん!というかすずやんがおかしいんや!なんで顔色ひとつ変えんで玉ねぎ猛スピードで千切りできるん!?」


「ふっふっふっ……僕には日常生活で地味だけどとても役に立ってる瞬膜さんがあるのだー!」


 本当、瞬膜さんまじ最高。


 僕達が料理に取りかかり始めた所で帰ってきたちー姉へ悔しそうに言うとらちゃんに、僕は上機嫌に尻尾を揺らしながらドヤ顔でそう言い返す。


「瞬膜?なにそれ?」


「ほらこれこれ、目に透明な膜が被さっててそれが動いてるでしょ?これのことだよー」


 あ、地味に瞬膜をちゃんと意識して動かしたのって初めてだ。ちゃんと見えてるかな?


「ほんまや!なんか膜みたいなのが動いる!えー!なんやそれ!?すずやんずるい!」


「ずるくありませーん。僕の体の機能でーす。さっ、とにかくまずはカレーをさっさと作っちゃわないと」


 とらちゃんの方を向いてからかうように瞬膜を見せた僕は、ずるいと言ってくるとらちゃんにドヤ顔のままそう言うと再び料理に取り掛かる。


「でもやっぱり瞬膜云々を抜きにしても鈴香の料理のスピードは凄いよな、包丁とかトントントンじゃなくてトトトトトって感じだし」


「あ、隆継とむーさんおかえり。お風呂掃除ありがとね」


「俺らは料理出来ねぇからな、これくらいはやるさ」


 ひゅー、流石隆継ー。

 うちのお風呂って僕の都合上すっごい大きいから毎日洗ってくれるのってすっごい助かるんだよね、隆継に改めて感謝だ。


「俺は一応料理できるけどな」


「よし、1回黙ろうか龍清」


「はいはい、とりあえず2人はアタシ達が料理してる間にお皿とか用意しててくれないかしら?その後は好きにしてていいから」


「あいよー」「わかった」


 お願いしていた風呂掃除から帰ってきた男2人はさーちゃんにそう言われ、僕手作りの水晶食器を取るべく食器棚へと向かう。

 そしてそんな彼らに僕はありがとうとカレーの具を炒めつつ、手を顔の前に持ってきてから目を閉じて軽く頭を下げるのだった。

 この後出来上がったカレーを皆で食べたが、いつもより賑やかな食卓はとても楽しかった。

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