第108鱗目:おばあちゃん、龍娘
「んんっ………んんぅ……」
ダメだ、寝れない。
夜になり晩御飯やお風呂なんかを済ませ、寝るのにいい時間になるまでおばさんやちびっ子達とお喋りして過ごした僕は、布団の中で眠ることが出来ずにモゾモゾしていた。
「んむぅ…………鈴ちゃんふわふわさらさら………」
ちー姉それ僕やない、ちー姉の掛け布団や。
やっぱりちー姉の実家だし寝慣れてるのかなぁ、ぐっすりとよーく寝てらっしゃる。というか…………
「んんぅ………………」
……やっぱりでっかいなぁ………というか初めて会った時よりもう一回りくらい大きくなってない?
寝言を言いながらもぐっすりと眠っているちー姉の、寝返りを打つ度ぽよんぽよんと大きく動く2つの塊を見て、僕は自身の平原へと目を落とす。
……………僕のも少しくらい大きく……せめて………せめて手に少し引っかかるとか当たるとか、その程度でいいから僕にも…………せっかくだしそれくらいは………
「…………少し、散歩でもしてこよう」
ふにふにと柔らかいが一切の引っかかりもない、自身のちー姉のぽよぽよがある部位と同じ部位を触っていた僕は、何やってるんだと言うように布団から起き上がって頭を振る。
そしてちー姉を起こさないように僕は静かに障子を開けて廊下へと出ると、適当に縁側にでも行こうかと暗い廊下を歩き始める。
夜になると雰囲気あるなぁ…………こう、この間隆継がやってたゲームのダンジョンとかいう感じの。
「…………こ、怖くなんてないし。ちょっとその、隆継がやってたやつだとお化けが出てきたからって別に怖がってないし。あれはゲームなんだし!現実であんなことある訳ないもんねー!」
僕自身が現実でありえない事を体験してるじゃないかって?それはそれ、これはこれ。
自分の当てはめた隆継のやっていたゲームがお化けの出てくる物だったのまで思い出した僕は、きゅっと尻尾を抱っこしながら小声で自分にそう言い聞かせつつ廊下を進む。
そして宴会会場でもありちー姉が正座させられていた座敷まで僕が来ると、そこは夜とは思えない程月明かりで明るくなっていた。
「わぁ…………すごい、月明かりだけでこんなに明るく……」
僕自身暗闇はよく見えるんだけど、こんなに明るいなんて…………凄いな田舎。そうだ、せっかくだし夜空でも見てから戻る事にしよう。
そう僕は考えると縁側へと向かい、ガラス戸をカラカラと開ける。そして─────
「さてさて、こんなに明るいんだからきっと夜空も────────」
雲一つない夜空に一際明るく浮かぶ月と、夜空いっぱいに広がる一つ一つがハッキリとわかる程輝いている星々に僕は思わず息を飲む。
そして僕が縁側に立って夜空を見上げていると、後ろから声をかけられる。
「なんね、鈴香も空ば見に来たとね」
「あ、おばあさん……じゃなくておばあちゃん」
「うむ」
呼名にこだわるのはちー姉と一緒なんだよねぇ、これはやっぱり血筋と言う奴なのだろうか。
「ここの夜空は綺麗かでしょ、星がよー見えて。それに今日は雲もなかけん、いつもよか星が見える」
僕が名前を言い直すと満足そうに頷いたおばあちゃんは、縁側に座って夜空を見ながら僕へとそう言って来る。
そして僕もおばあちゃんに習って縁側へと座ると、おばあちゃんは僕へとちー姉の事を話し始める。
ちー姉が小さい頃どんなだったか、おばあちゃんが親代わりだった事、昔から自分に似て正義感の強い人助けをする子だった等と、僕の知らないちー姉の話を僕は沢山聞いた。
「あん子はよー人ば助けようて無理するけん、鈴香が助けてやってちょうだいね」
「はい」
僕の時も即座に決断するような人だからね、止めはしないけど助けてはあげないとね。
「鈴香」
「は、はい」
んっ。
「あーたももうばあちゃんの大切な孫だけんね、なんか困った事とかあったらすーぐ頼ってよかけんね」
空を見ていたおばあちゃんは僕の方を向いて名前を呼ぶと、僕の頭にぽんと手を置いて優しい顔でそう言ってくる。
「うん……ありがとうおばあちゃん」
なんか少し気が楽になったかも。
「よかよか、さっ、もう遅かけん部屋へ戻って寝なっせ」
「うん、おばあちゃんおやすみなさい。また明日ね」
「はい、おやすみなさい」
僕はおばあちゃんに頭を撫でられた後頭をぽんぽんとされ、それからおばあちゃんに僕は笑顔で手を振りながら部屋へと戻った。
その後、僕はさっき寝付けなかったのが嘘のようにすうっと眠りへと落ちたのだった。
ーーーーーーーーー
「もう帰るとね」
あれからもう一日、おばあちゃんの家でゆっくり過ごした僕達は、早朝にこっちに来た時と同じような格好で玄関前に立っていた。
「うん、休みが明日までしか取れてないからね。次はお正月に帰ってくるから」
「僕も来るからねー!」
お姉ちゃんって呼ばれるのも悪くはなかったしね。
「あーたが休み短かねぇ。ばあちゃんも二人が正月に来るとば楽しみに待っとくけんねー。それじゃあまたおいで」
「うん!」
おばあちゃんに手を振って貰いながら、僕はちー姉と荷物の入った水晶の箱を持って空へと舞い上がり、家への帰路へとつく。
そうして僕達のお盆の里帰りは終わったのだった。
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