第105鱗目:移動!龍娘!
「鈴ちゃん大丈夫ー!?そろそろ休憩挟んどかない!?」
んー、まだ翼は全然余裕だし疲れてもいないけど……
ちー姉ちゃんに休憩を提案されぎゅっぎゅっと持ち手を握り直した僕は、思ったよりも体の熱が奪われている事に気が付く。
ここらで休憩挟んどくのがいい……かな?
「うん!一旦地上に降りるねー!近場に良さそうな場所はー!?」
「このまま直進2kmの所に公園!」
「了解ー!」
ちー姉ちゃんから着地するのに良さそうな場所を聞いた僕は、バサリバサリと翼を動かして高度を落とす為に滑空し始めた。
ーーーーーーーーーーー
「はふぁ〜……あったまってきたぁ……」
「鈴ちゃんお疲れ様、本当ごめんねー?」
「いいよいいよー、こればっかりは仕方ないもん」
ちー姉ちゃんもここ最近はお仕事で忙しかったからね、新幹線とやらのチケットが取れてなかったのも多分仕方ないよ。
新幹線がどんなのかは知らないけど。
ジーワジーワとセミの鳴く山林の人気のない公園に着地した僕は、上空で冷えたせいで地上のうだるような暑さを心地よく感じていた。
そしてなんで今僕達はそんな場所に居るのかと言うと……
「熊本まで後どれくらいー?」
「んー、今中国地方だし多分この調子なら後3、4時間くらいかなぁ?おっ、もう100kmくらいで関門海峡だね、海が見えるよー」
「海!!寄っちゃだめ?」
「だーめ、今日は里帰りが目的なんだから。寄り道はダメよー」
むぅ、仕方ない……まだ九州にも入ってないし、寄り道は出来ないかぁ。
「はーい」
今日はちー姉ちゃんの里帰りの為、ちー姉ちゃんのおじいちゃんおばあちゃんのお家があるという九州の熊本へと向かっている所なのだ。
移動手段は車でも飛行機でも新幹線とやらでもなく、僕を使っての空での移動だが。
「それよりも初めての長距離飛行だけど鈴ちゃん大丈夫?翼とか背中に負担かかかってない?」
んー、翼も動かすのに違和感とか痛みもないし……
「うん、大丈夫だよ。ほらこの通り」
「ほんと?無理とかしてない?」
「ふふん、無問題なのだよちー姉ちゃん。さっ、そろそろ体もあったまったし行こ。お昼までにはつきたいし」
「ふふっ♪そうね、そうしましょうか。それじゃあ鈴ちゃん後少し、お願いね」
「はいさー!」
僕が元気よく返事をすると、ちー姉ちゃんは僕の鱗の粉末を混ぜて作ったという命綱代わりのロープを僕の腰と自分の腰に結びつけ、僕が今朝水晶で作った人が入っても余裕のある大きさの箱に入る。
そして僕はちー姉ちゃんが入ったのを確認すると箱にある持ち手の部分を持ち、翼を大きく広げて空へと飛び立つ。
「さ!ちー姉ちゃん飛ばすよ!」
「うん!」
翼を羽ばたかせ一気に空高く舞い上がった僕はちー姉ちゃんにそう言うと、何度も強く大きく翼を羽ばたかせて空を翔る。
緑豊かな森を通り過ぎ、眼下に広がる大きな街を眺め、途中風が乱れたせいでバランスを崩しかけたりしながら海峡を渡り、大きな山々を越え、その大きな翼で空を切りながら目的の場所へと。
「本当に凄いね鈴ちゃん、いつもこんな景色見てるの?」
「ううん、ここまで色んな景色を見たのは初めてだよ」
本当、海とかあんなに大きな街とか初めて見たよ。
「今度は海にも寄りたいなぁ」
長時間飛んでいると流石に慣れてきた事もあり、僕達は最初の頃と違って声も張ることも無く会話をしていた。
「ふふっ、そうだね。来年は長めにお休みとって途中で海とかにも寄ろうか」
「本当!?それじゃあ僕もマッサージとか覚えてちー姉ちゃんが頑張れるようにしないと」
そうすればちー姉ちゃんのお仕事ももっと捗らせることが出来てお休みも早く取れるかも!
「あら、それは楽しみ。あっ、見えてきたよ鈴ちゃん。あの川の傍にあるちょっと大きい家が私のおばあちゃんの家だよ」
もしかして…………ちー姉ちゃんのお家ってお金持ち?
阿蘇山という山を超えた辺りから徐々に高度を落としていた僕は、見えてきたちー姉ちゃんの言う家を見てそんな疑問を抱く。
「さっ、庭の所に着地して貰えば大丈夫だから。そこに着地してね」
「ん、わかった」
ちー姉ちゃんに着地すればいい場所を聞かされた僕は、即座に返事を返すと着地をするために高度を更に落とすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます