第101鱗目:お化け屋敷!龍娘!

 お化け屋敷、それは大抵どのお祭りにもある施設の1つであり、お客さんからお金をとって怖がらせるという鬼畜の所業としか思えない場所だ。


「ねぇ、ほんとに行くの?お化け屋敷ほんとに行くの??ほらあっちにチョコバナナあるよ?あっちいこ?皆で食べよ?買い占めよ?」


「すずやんもしかして怖いん?というか怖くても買い占めはあかん」


「こっ!怖くなんてないし!」


 そう!ほんの、ほんのちょーっとだけ怖いかなーとか思っちゃったりしてるかもしれないけど……


「怖くなんてないしっ!」


「大事な事なのでってやつだな、さて入場は2人1組って書いてあるがどうする?」


 あれっ!?なんかもう行く事になってる!?


「そうね、まぁ組み合わせだけで言うならアタシと隆継、虎白ちゃんと武玄くんになるんだけど……ふふっ♪これはクジで決めましょうか」


 さーちゃんは横でむぎゅっと尻尾を抱っこしている僕をチラッと見ると、軽く笑ってクジで決めようと提案をして来た。


「それじゃあ今からあみだ作るわね」


 何処から紙とペンを……


 そしてあみだくじの結果僕達は……


 ーーーーーーーーーーー


「なぁ鈴香、もうちょい離れてくれないか?」


「あっ!うん、ごめん!」


 やばい、無意識に引っ付いてた。

 でもさーちゃんが平気そうな顔で出てきただけあってそこまで怖くはないな、うん。

 怖くない、怖くないぞー。


「だから鈴香、もうちょっとだな」


「ご、ごめん!」


 あみだの結果僕と隆継、とらちゃんとむーさん、そしてさーちゃんという組み分けになった僕達は、店員さんの言う通り2組ずつ入り僕達はさーちゃんと入れ替わりでお化け屋敷に入っていた。


「でもあれだね、わーっ!って脅かしてくる系じゃなくて良かったよ」


「お?やっぱり怖かったのか?」


「怖ないし!これでも僕は中身────」


『うおぁぁぁぁあ!』


「うわぁぁぁぁぁああ!!!」


 多分お化け屋敷も中盤まで来たであろう所で、びっくり系じゃないと油断していた僕は唐突に驚かされ、幽霊の叫び声にも負けない大きさの叫び声をあげて隆継に飛びつく。


「中盤ら辺までは雰囲気で怖がらせて慣れてきた所でびっくりか、なかなかやるじゃないか」


「やるじゃないかじゃないよう!」


 もう大丈夫だよね?もうわーって来ないよね!?


「ほーら、鈴香涙目になってんぞー。やっぱり女の子にはお化け屋敷きつ────」


「へ、平気だし〜?こっ、こんなのっ、全然なんともないし〜!?」


 そんな心まで女の子じゃないしー!


 隆継に煽られ若干ムキになりながら、ぐしぐしと目を擦って僕は隆継より前を歩いてやろうと隆継より先に出る。


「あ、おい!先に出たら!」


「別に驚かされてもなんともないぃぃぃぃぃい!!?」


「ほらやっぱり」


「がしって!なんかにあしがしって!」


「よしよし、大丈夫、大丈夫だからな。ほら落ち着け」


「うぅぅぅぅ……」


 早速脅かされた僕は隆継に飛びついて服を引っ張りながら足を掴まれた場所を何度も指さす。すると隆継は落ち着くように僕の頭を撫でてくる。


「怖いの苦手なら無理しなくていいのに」


「別に怖くないし、苦手じゃないし、得意だし」


「はいはい、ほら曲がり角だから気をつけろよ」


「うん」


 顔を俯かせて隆継の肩を掴み、尻尾を隆継の腰に巻き付け翼で自分の左右を覆っている僕は、時々聞こえる声にビクッとしながら、そのままお化け屋敷の外へと出る。


「いやー、なかなかのクオリティだった。な、鈴香?」


「もう終わった?」


「おう」


「ふぅー……全然怖くなかったね!」


 余裕だった!うん!やっぱりそこまで怖くなかったね!うん!


「いやいやいやいやいや、すずやんめっちゃ怖がってたやん!」


「そんなことないもーん、ちょっと隆継の後ろで翼とか横に移動させてただけだもーん」


 だから別に怖がってたわけじゃないもーん。


「はははっ、天霧さん怖いの苦手だったんだな」


「ちょっ、むーさんまで!」


「さて、そろそろね。鈴、あっち見て見なさい」


「なぁにさーちゃん、あっちになにかあるの?」


「いいから暫く見てなさい」


 さーちゃんにそう言われ、さーちゃんにも何かされるのかと少しむくれながら僕はさーちゃんの指さした方を見る。

 そしてそのまま暫く待っているとヒュルルルルルという音がして───────


「わぁー!」


 凄い……!打ち上げ花火だ!


 ドーンとお腹に響くような音を立て、夜空に大輪の花を輝かせる花火が打ち上がった。


「皆!凄いよ!花火!花火だよ!」


 花火を見た僕が興奮気味に皆の方を振り向くと、そこにはニコニコと笑顔を浮かべた皆が立っていて。


「鈴!」「鈴香!」「すずやん!」「天霧さん!」


「「「「誕生日おめでとう!」」」」


 夜空に輝き咲く大輪の花の下、僕は皆に突然祝われ────


「え?」


 首を傾げたのだった。

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