第98鱗目:同居人の非日常(隆継編)

 俺は漫画が好きだ、ゲームも好きだ。

 ライトノベルや同人誌なんかも大好きだ。


「はぁー……美味しかった〜♪」


「ふふっ、たまには私も料理しなくちゃね」


「千紗さんの料理美味しかったです。あっ鈴、ほっぺにお弁当着いてるわよ」


 そんな俺と同じような2次元大好きな人間の大半は「可愛い女の子達と一緒に暮らしたい」そう1度は夢見る事だろう。

 そして今俺は────


「ありゃ、んーと……どこついてる?」


「ここよここ、取ってあげるからちょっとじっとしてなさい…………はい、取れたわよ」


「ん、ありがとさーちゃん」


 その夢を叶えている…………!!!


 サナにほっぺに着いたご飯粒を取ってもらい、照れくさそうにえへへと笑う鈴香を見ながら俺は心の底からそう思っていた。


 ーーーーーーーーーー


 いやぁー、女の子の手作り料理を毎日食べられるなんて最高の生活だよなぁ。

 しかもすっげぇ美味いし。


 晩御飯を食べ終えて今日はサナや鈴香、お姉さんの後に風呂を貰った俺は、風呂から上がると少しニヤけた顔でそんな事を考えていた。


「今日はゲームやりたかったから順番最後に回してもらったが……身内じゃない女の人達が入った後の風呂に入るのってなんか背徳感あるな」


 でもまぁラノベとかでもよくあるしこういう同棲イベントのあるあると言うべきか、ラッキースケベが本当にあるとは思ってなかったなぁ……


 そんな事を考えながら髪の毛にドライヤーの熱風を当てつつ、わしゃわしゃと髪の毛を乾かしていたからか。

 引っ越してきたばかりの頃に脱衣場で見てしまった鈴香の真っ白い肌と、ほっそりとした女の子らしい体が頭に浮かび上がる。


 まぁでも、他2人と違って恥ずかしがったりせずに下着だけで時々うろついてたりする辺り、やっぱり元男っていうのは本当なんだろうなぁ……

 まぁついてなかったし今は完璧女の子だがな。


 髪の毛を乾かし終えた俺はふるふると頭を振り、頭の中に細部まではっきり思い浮かびかかっていたすっぽこぽんな鈴香の姿をかき消す。

 流石に完璧に思い浮かべたとあっては同居人兼家主の彼女に申し訳ない。


 さ、それじゃあ部屋に戻ってまたゲームでもしようかな。


「…………くぅ………んぁ……」


「…………え?」


 首にタオルをかけて脱衣場を出た俺は、そのまま突き当たりにある鈴香の部屋の前を通り過ぎようとして、鈴香の部屋から聞こえてきた声に思わず足を止める。


 い、今何か聞こえたような………すっ……少しだけ…………


「んんっ……!うぁぁぁ………っ!」


「ほら鈴ちゃん、ここが気持ちいいでしょ?」


「んあう……っ!そこっ……!んあぁー……」


 ごくりと唾を飲み込み、俺が鈴香の部屋の扉へ耳を当てると、中から少し苦しそうな、そんでもってとても気持ちよさそうな鈴香の声が聞こえて来る。


 なななななっ!何やってんだ!?それにこの高い声って鈴香のなのか!?いや、声は元から高かったか…………って違う違う!今はそうじゃない!


「んあぁぁぁぁ……そこぉぉ……ちー姉ちゃっ!…んんっ…もうっ…ちょっ……と強くぅ……んんっ!」


 こっ、これってあれだよな……その、あぁいうのだよな?というか鈴香とお姉さんってそんな関係だったのか?

 …………もしかしてちー姉ちゃんってお姉様的な意味だった?


「はぁぁぁぁ……んうぅぅ……!んあぁ……っ!」


 部屋の中から聞こえてくる鈴香とお姉さんの声を聞き、俺は中で何があってるのかをもっと知ろうと耳を更に扉へ押し当てる。

 そしてそちらばかりに気を取られていた俺は……


「女の子の部屋のドアに耳を押し当てて、一体バカ継は何してるのかしら〜?」


「うおぁぁ!?サッ!サナッ!?」


 いっいつの間にっ!?


「うおぁぁじゃないわよ、あんた一体何して──」


「んんっ……!!ちー姉ちゃんっ!そこぉ……そこ気持ちいよぉ……」


「えっ……!こっ、これって…………隆継あんた……!」


 目の前に黒い笑みを浮かべたサナが居ることに俺は気が付かず、いきなり声をかけられ驚いたあまり尻もちをついてしまう。

 そしてタイミング悪く、そのタイミングで部屋の中から一際大きい鈴香の声が聞こえて来る。そしてその声を聞いたサナは顔を赤くすると、いつもよりきつい目付きで俺を睨んでくる。


「ちっちがっ────」


「言い訳無用!」


「いっったぁ!!」


「二人共何してるの?」


 今までに無いほど怒っているサナと鈴香の部屋の前でドッタンバッタンとやっていると、ガチャッという音と共にお姉さんと鈴香が部屋から顔を出す。


 やっ、やばい!どう言い訳するのが一番ダメージ少なくなる!?


「す、鈴!?それに千紗さん!こっ、これはですね!」


「そ、そう!俺達はだな!」


「ちょうどよかったー!二人共ちょっと手伝ってくれない!?」


 ……はい?て、手伝い?


 部屋から顔を出してきた2人をみてを見て俺とサナが何とか言い訳をしようとした所で、お姉さんが助かったと言うように俺達に手を合わせてお願いしてくる。


「えっ、えーっと……」


「ごめんねうるさくしちゃって、でも鈴ちゃんマッサージしてあげるととっても気持ちよさそうで」


「そっ、そのっ……俺達が………ってえ?」


 マッサージ?


「えーーっと、ちょっと待ってくださいね。とりあえず千紗さんが鈴をマッサージしてあげてたのよね?」


「そうよ?」「そうだよ?」


「そしてそれをアタシ達にも手伝って貰いたいと」


「だね」「うん」


 なるほどそういう事だったのか、サナのおかげでまるっと全部理解出来たぜ。いやぁーまさかあぁいうのじゃなくてマッサージだったとは。

 さてそれじゃあ疑問も解けたし、俺は部屋に戻ってゲームでも────


「僕って翼とか尻尾のせいか肩凝りとか酷くって、2人がマッサージしてくれたら僕すっごい嬉しいなぁ。二人共、お願い……できる?」


「「うっ……し、仕方ないなぁ」」


 申し訳なさそうに手を合わせながら首を傾げてお願いしてくる鈴香を見て俺達が断れる訳もなく、見事にハモりながらも承諾したのだった。

 そして暫くして鈴香を満足させて部屋に戻った俺は布団へ潜り、鈴香の少し色のある声を聞き続けても間違いを犯さなかった自分を褒めてあげたのだった。

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