14鱗目:ドッキリ歓迎会!竜娘!

「───ゃん─────かち───」


「すー…………すー………んみゅっ……」


 ぬくい………ほわほわ…………………


「─すず─ゃん─きて───ちゃん───」


「んんっ…………むみゅう……もちょ……………」


 このまま……もすこ────


「ひゃうんっ!?」


「おぉう?!びっくりしたぁ」


「お、お姉ちゃん…?び、びっくりしたぁ…………ってもーっ!翼の付け根は触んないでって言ったじゃん!」


「あはは、ほっぺた膨らませちゃっててかーわーいーいー♪」


「むー!」


「ごめんねー。でもそろそろ起きてもらいたかったから、許して?」


 あれだけこしょばゆいというか、変な感じがするから付け根触んないでっていったのに!

 それにほっぺた膨らませてないし、勝手に膨らんでただけだし。


「ん?起きてもらいたかった?」


 翼の付け根を触られて変な声をあげながら跳ね起きた僕は、無意識にほっぺたを膨らましながらお姉ちゃんに抗議しつつもお姉ちゃんの言った言葉にハテナを浮かべる。


「うん。気持ちよさそうに寝てた所申し訳無いんだけどね。ほらっ昨日着てた服に着替えておいで、脱衣場にあるから」


「うん、わかった。んんぅ……!ふぁぁ……よく寝た」


 こんな薄暗くなってきてる時間にどこか行くのかと疑問に思いつつも、僕は欠伸をしながらお姉ちゃんに言われた通り脱衣場に向かう。

 そして昨日貰った僕用に魔改造されている洋服にまだ少し抵抗を覚えつつも袖を通して顔を洗う。


「ふぅ……スッキリ」


 でもやっぱり着慣れてないって言うのもあるんだろうけど、スカートは恥ずかしいというか気になるというか……


 顔を拭いた後、僕はスカートの裾を摘みながらそんな事を思い、まだ慣れない足の周りにまとわりつくひらひらとした布の感覚にちょっとモジモジしつつ脱衣場を出る。

 僕が脱衣場から戻ってくるとお姉ちゃんがちゃんと着れてるかを確認し、そして一通り確認した後満足気に頷いたと思うと───


「だーれだっ♪」


「わわわっ!」


 お姉ちゃんより高めの声がどこからか聞こえたかと思うと次の瞬間、突然背後から目を覆われ視界が真っ暗になり僕は驚きでびくぅっとなってしまう。

 しかし1度体験したこの展開、誰がやってるかなんてもうわかりきってるもので…………


「叶田さんでしょー?離してくださーい、前見えないでーす」


 至って冷静に対応することが出来た。


「あっちゃーバレてたかー。でもダメー。それじゃあ行こっか千紗ちゃん」


「はーい。鈴香ちゃん手を引っ張るから着いてきてね」


「えっ?……え?行くってどこに?どこ行くの?というかこのまま?」


「それは着いてからの」


「お楽しみだよー」


「わっ、わわわっ!ゆっ、ゆっくり!せめてゆっくりお願いっ!」


 まさかお姉ちゃん達も僕を攫う気で?!いやいやいや無いでしょ!それは流石にねーですでしょ!

 うん。あんなぽわっぽわしてるお姉ちゃんがそんな訳無いでしょ。


 お昼の事から少しだけ不安に思いつつも、目は叶田さんに塞がれたまま僕はお姉ちゃんに手を引かれ右へ左へ、挙句の果てには階段を降りてまでどこかに連れていかれる。

 そして数分か数十分か、このままの状態で歩かされた僕はちょっとした段差を上がり、椅子に座らされる。


「それじゃあ行くよー」


「「せーのっ」」


 パァンッ!


「「「「「天霧鈴香さん!ようこそ日医会へ!!」」」」」


 お姉ちゃんと叶田さんの掛け声と一緒に僕の目を隠していた手がどかされると、割れんばかりのクラッカーの音と共に沢山の人の歓迎の言葉が耳へと届く。

 そして当の本人はというと────


「…………………………はい?…………え?」


 そんな突然の状況に何も考えれずぽかんとなっていた。

 そしてそんな僕がつんつんと肩を突つかれそちらへと振り向くと、そこにはドッキリ大成功といいたそうな顔のお姉ちゃんと叶田さんの楽しげな顔があった。

 それを見て僕ははっと我に返り、何をやられたのか、自分がどういう状況に置かれているかを理解した僕はオロオロとしかけ───

 その時、パンパンと2度手が打ち鳴らされる。

 その手が打ち鳴らされた音の方へ僕が振り向くと、そこには三浦さんが立っていた。


「それじゃあ姫、じゃなくて鈴香が混乱してるだろうから説明を始める。まずは鈴香、突然こんな事になって混乱させた事を謝る。どうしても驚かせたくてな」


 そう言ってニヤリと笑う三浦さんを見て僕は。


 あ、まんまとやられた。


 そう思ったのだった。

 そして三浦さんは咳を一つして説明を始めた。


「我々日医会は知っての通り日本の医療技術関連を牛耳っている存在だ。

 そしてその日医会の本部、当然限られた優秀な職員しか居ないが、その中でもここは中枢にあたる場所だ」


 三浦さんがそこまで言うとぱっとホールは暗くなり、奥にあるスクリーンにスライドが映し出される。

 スライドには歪な形の建物の上空写真が写されており、外側と内側で外輪、中枢という文字が色の塗り分けられた場所に書かれていた。


 ここってこんな形してたんだ…………四角い建物かと思ったら丸かったんだなぁ。

 というか今更だけど日医会本部の1番機密な場所なんだねここって………………とんでもない場所に来ちゃったもんだ。


「そしてここに居る我々中枢職員総勢54名はその優秀な職員の中でも実績、能力だけでなく性格、人格、倫理観や正義感。

 それ以外にも多数の審査の末に選ばれた選りすぐりの信用の置ける奴らだ。じゃなきゃ極秘の情報を扱ってるこの場所にはつくことが出来ない」


 つまり相当優秀で性格とかもまともないい人達ってことかな?


「まぁ残念ながらやはり鈴香の情報は漏れていた訳で、外輪の事務員にスパイが紛れ込んでるのだろう。中枢に事務員は居ないからな」


 そこまで三浦さんが言うとホールは明るくなる、そして充分に明るくなると三浦さんはホールにいる全員に聞こえるように声を張る。


「いいかお前ら!見ての通り鈴香はイレギュラーな存在だ!

 だが彼女は我々が危害を加えない限り敵対はしない!そして確実に人類に大きな貢献をする事になる!故に──────」


 そこまで三浦さんは言うと1つ大きく息を吸い、さっきまでより更に大きな声を出した。


「我々日医会中枢職員総勢54名はこれより今現在行っている研究を全て一時凍結し、彼女を研究し成果を上げる!

 これは厳武会長、及び日医会幹部全員による中枢職員全員への命である!日医会の誇る精鋭たるお前達の力を示せ!」


 三浦さんはホールに集まっている54人の研究員にそう叫ぶようにして話しきる、そして一瞬の静寂が訪れ──────────


 うおおぉぉぉぉぉぉーーーー!!


 肌にビリビリと感じる程の大声にホールが包まれた。

 僕はもう一度、今度は顔だけではなく全身で三浦さんへと向き直る。すると三浦さんはこちらを見てにこりと笑い。


「改めてよろしくな、俺らの姫様」


「こちらこそよろしくお願いします」


 そう言ってうやうやしく例をする三浦さんに僕もにこりと笑い返しながらよろしくと返す。


 この人達となら僕でも仲良くなれる、信用出来るかもしれない……こんな人付き合いなんてしてこなかった僕でも………………

 でも、それはそれとして。


「皆さんの姫呼び止めててくれませんか?その……流石に恥ずかしいですし、そもそも僕男でしたし……」


「それは出来ない相談だな。可愛いから仕方ないと諦めてくれ」


 モジモジしつつ勇気をだして言葉にした前々から思っていた事はズバッと拒否されてしまい、次に可愛いと言われドキリとしてしまう。


「なっ……!かわっ…!もう!流されないんですからね!」


「ははは、ダメだったか」


「ダメですよ!全くもうっ」


 そう言って僕は三浦さんからプイッと顔を背ける。しかしその時、また無意識で頬を膨らませていたことに僕は気付いてクスリと笑う。


「ん?どうした?」


「ふふっ♪なんでもないですよー」


「そうか?それじゃあ始めるとしようか。よし、お前ら!歓迎会の始まりだ、乾杯!」


 乾杯!!!!!!!!!


 三浦さんの乾杯に合わせて他の人達も乾杯と言い、机の上に並んでいる沢山の見たこともないような豪華な料理を食べ出した。

 こうして僕の歓迎会は賑やかに進んでいったのだった。


 この後、甘いお菓子にどハマりしてそればっかり食べてた結果、お姉ちゃんに怒られたのはまた別の話だ。

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