第19話 フレンズ

「なぁ…ユキはやっぱり王宮で魔道を学ぶんだろ?」

 華奢な体躯の少年に、日焼けした元気のいい少年が話しかける。

「うん!、僕は身体が弱いけど…魔法力があるんだって」

「いいなぁー、俺には魔法力なんてまったくないから…でも俺もいつか王宮へ行くよ、俺は力がある。だから剣士としてキングダムへ行くんだ」

「うん、僕、先に行って待ってるよ」

「あぁ!約束だ、俺もこの村を出てキングダムへ行く」

「タケは王宮剣士になるの?」

「あぁ、なる。必ず王宮へ使えるソードマスターになる」


 ………………

 華奢な少年は、それから数日後華奢な少年『ユキ』はキングダムにある王宮から迎えが来て村を去った。

 王宮にはユキと同じように『魔法力』を確認できた子供たちが集められていた。

 広間に集められた子供たちの前に、豪華なローブを纏った初老のウィザードが姿を現し、子供たちにこう言った。

「知ってのとおり、この世界は『魔石』に込められた『魔法力』によって支えられている。

『魔石』は誰もが使えるものではない。

『魔法力』を持つものだけが『魔石』の力を解放できるのだ。

 諸君は『魔法力』を持っている選ばれたもの。

 この王宮で生涯を魔道追求に捧げてほしい、それが国民を豊かにし王国を発展させる」

 ………………

 ユキの旅立ちより遅れること3年、タケも村を後にする。

 背中にトマホークを背負い、腰にブレードを携えた逞しく成長したタケ。

「アイツは王宮で頑張ってるんだろうな……」


 キングダムへ着いたタケは、さっそく王宮兵士選抜試験に挑む。

 採用されたものの、3年間は門番と都市警備の日々。

 思い描いたソードマスターには程遠い日々。


 ユキは…王宮には居なかった。

『魔法力』が弱すぎて研究室に入れなかったのだ。

 ユキは魔石採掘場で『魔石』の選別に就いていた。

 本を読み漁るだけの日々。


 ある日、ユキは禁書に書かれていた下法に手を染める。

「僕だって、『魔法力』さえ上がれば…」

 自らの身体に『魔石』を埋め込む。

「まだ足りない…もっと『魔法力』を上げなきゃ…」


 ある日、タケに採掘場調査の任務が舞い込んだ。

 ソードマスター指揮の選抜部隊に選ばれたのだ。


 採掘場に到着した選抜部隊の前に表れたのは、全身に魔石を埋め込んだウィザード。

『魔法力』が強すぎるのか、その身体は宙に浮いている。

「視認できるほどの魔力……」

 ソードマスターが息を飲む。

 ウィザードが右手を部隊に向ける、それだけで剣士・戦士はバタバタと倒れた。

 フハハハハハハ…

 狂ったように笑いながら、王宮へ飛び立つウィザード。

 タケは辛うじて絶命を撒逃れていた。

 何人かは生きている。

 ソードマスターも無事である。

「タケ…王宮へ戻るぞ」


 王宮では宮廷ウィザード達が兵士と奮戦していた。

 突如飛来した名もなきウィザード一人に完全に劣勢である。

「こんなものか?エリートウィザードの力は…バカにしやがって!俺をバカにしやがって!」

 名もなきウィザードが『魔法力』を解放する。

「もう…もたない…王国が滅びる」


「やめろ!ユキ」

 地上から叫ぶ戦士…。

 冷ややかな視線で地上の戦士を見下ろすユキ。

「タケ…か?」

「やめてくれ…なんで…こんなことをする?お前はそんなヤツじゃなかっただろ?」

「こんな理不尽な世界…俺が変えてやる…俺が管理してやる…平等とは言わないが理不尽がまかり通るような世界にはしない!」


 ユキがタケの目の前まで降りてくる。

 他のものは、ユキの魔力の壁に阻まれて近づくことすらできない。

 タケだけがユキの前で立っていられる。

 ユキの顔は大小の魔石が埋め込まれているが、それでも少年の頃の面影が残る。


「やめてくれよ…でないと俺…」

 タケの顔が涙と悲しみで歪む。

「村の名誉だって…何があったんだよ…ユキ…」

 タケの腰に携えられた剣がカチャリと動く。

 意思を持つ剣『マジックキャンセラー』別名ウィザードバスター。

 ソードマスターに与えられる剣。

 タケに託された剣。

「ちっ!」

 舌打ちをして飛びのくユキ。

 一瞬遅かった。

 剣は強大な魔力に引き寄せられるようにユキの胸を貫いた。

「ユキ…?」

 地面に倒れるユキ。


 ………………

 王宮の地下には封印された魔王が眠る。

 無数の魔石を埋め込んだ魔王は、強大な魔力に飲み込まれ死ぬこともできないまま眠り続ける。

 すでに鉱物でも人間でもない。

 無限の魔力を放ち続ける魔法炉。

 王国は、この無限の魔法を使い発展し続ける。

 他国を飲み込み大きくなるのだ。


 魔法炉に手をかけ呟くように話しかける男が一人。

「なぁユキ…これで良かったのかな?、なんで採掘場に禁書なんかあったんだろうな?俺は仕組まれていたようにしか思えないよ…」


「ソードマスター進軍命令です」

「あぁ…今行く」


 王国は栄え続ける、無限の魔力を産み続ける『魔法炉ユキ』がある限り。


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