本編

ある堕落者とプログラム


 ああ、小説書くのって大変だな――


 分かりきったことだった。過去何度も同じ思いに苦しんできたし、そろそろだろうと予測も出来ていた。

 しかし、ぼやかずにはいられない。小説の執筆というのは、なんとリソースを割く作業なのだろうか。

 アイデアを具現化するのに手間がかかるし、それを小説という形に変換するのはもっと大変だ。脳内にある抽象的なイメージを文章という具体的な形に落とし込むのには、知識と経験則が必要になる。

 そうやって生み出した文章を、より自然に、興味を引くように整形手術するのも骨が折れる。


 そして何より――手間暇かけたものが受け入れられるとは限らない。



 かくして私は本日四度目のコーヒーブレイクを迎える。

 コーヒーマシンなんて洒落の利いたものはなく、冷蔵庫から1本178円のボトルコーヒーを取り出してカップに注ぐ。

 いいんだ、どうせ、違いなんてわかりゃしない――

 そう思いながら目の前にある、先日買ったばかりのPCを見つめる。

 このPCはとても性能が高い……らしい。各地で評判の超人気機種だと、電気屋のおじさんが熱心に話していた。

 だが、持ち主がこんな体たらくでは、その性能も宝の持ち腐れだろう。


 最新の、評判の、超人気機種のPCとやらよ。

 かわりにお前が小説を書いてくれないものか――



 ん?

 そうか。そういうことだったのか。

 なんでこんなことに最初から気が付かなかったのだろう。

 いるじゃないか、このPCには。うってつけの小説代行者ゴーストライターが。

 善は急げ。私は早速、その名を口にした。


「お話ししましょう、コ〇タナさん」

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