蟹のいる日常『ざりがにの奥地にて』
小説が書けなくなってはや幾年。私はXの奥地まで出かけていた。
そこには私と同じく小説が書けなくなった者たちが集まっていた。
はあ、と息を吐く。
インターネットでしか交われない人たちがここにいるのだ。
もうちょっと頑張ろう、いや休もう。休むのが一番だ。
私はPCを閉じ、目を瞑った。
その次の日。
玄関に蟹が来ていた。
玄関、という言葉と限界、という言葉は似ている。
そんなことを考えながら蟹を迎える。
「ハロー、僕は蟹だよ」
知ってる。
「Xの奥地に行くのはおやめなさい」
「なぜ」
「そこには闇しかない」
「行くも行かないも僕の勝手じゃないか」
「それでも、おやめなさい」
「そこでしか救われない人もいるんだよ」
「蟹の助けはいらないと? こんなに絶望しているのに」
「………」
「僕の手を取るだけで君は救われるのに?」
そこに。
「はいはいはい、君はざりがにですね、取り締まりますピピピピ~」
「な、何をするんだッ蟹か、蟹の手のものか」
「はいはいざりがにがご迷惑をおかけしました、すみませんね、連行しますのでピピピピピ~」
蟹、いやざりがにとなった元蟹と、本物の蟹らしき蟹が去ってゆく。
「なんだったんだ……」
それで一作品書けそうな気がして、書いたのがこの小説というわけだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます