ifルート『魔王』

「君が死ぬのを放置していた神を殺した。神を殺した私は神になった。しかし君は生き返らない、なぜだ?」

「はい、それは蟹がいないからです」

「センスのない冗談は身を滅ぼすぞ、側近」

「神を選ぶ予定であった蟹……それは『選ぶ』能力だけで言えば世界の理をも曲げる力を持っている。だがしかしあなたは神を殺してしまった。運命の相手がいなくなった蟹は有り余る力で世界を停滞させた……あなたも、あなたのご友人も」

「……貴様」

「エヘヘ。側近さんに似てたぁ? 彼なら今日は迷子だよ」

「迷子だと?」

「蟹神の力の行き場がいよいよなくてね……空間が曲がってきてるのさ」「何を……」

「そこでさあ、君、蟹神様に会って……『選ばれて』きてくれない? 真の神になるんだ。そうすれば君のご友人も……」

「断る」

「あれれ?」

「私は神と名の付く物が大嫌いでね。蟹神とやらが邪魔をしているというのなら、その神も殺して見せる」

「ははは、強気だなあ。面白いヒト。……忠告はしたからね」

「フン」

 言い終えた蟹はすうと薄れ、まるで始めからそこにいなかったかのように消え失せた。

「……側近」

「はい」

「『蟹神』を殺る」

「仰せのままに」

 そうして神の蟹界侵攻が始まった。

(蟹にまつわる物語群・ifルート)

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