第19話
「お前は何をしにウィリット神国へ行っていたんだ!
あんな年齢の子がいるなんて……」
お姉様と共に本宅の食堂に向かうと、その近くで声を潜めながらも怒っている声が聞こえてくる。この声はおじい様?
「仕事だよ。
ちゃんとやってきたことは父上もご存知でしょう?」
「だが……!」
「もう陛下にはご報告の際に許可をいただいております」
伯父様と知らない男性の声も聞こえてくる。どうしようかとお姉様と顔を見合わせていると、ようやく話が終わったようだった。
「こんばんは、おじい様、伯父様。
と……」
お姉様が先陣を切ってくれたので私はその後をついていく。すると、おじい様方が気まずそうに顔をそらした。きっと先ほどの会話を聞かれていたと気づいているのだろう。
「えっと、この子たちはもしかして……」
「ああ、新しく養子に迎えたアゼリアとウェルカだ。
アリストリアの子たちだよ」
「ああ、やっぱり!
とても姉上に似ているね。
初めまして、二人とも。
君たちの叔父になるバングルートだ」
人懐こい笑みを浮かべてそういった叔父様はとてもきれいな顔をしている。髪もきれいな紫がかった銀髪を長く伸ばし一つにまとめている。
「よろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
「今日二人にバングルートを紹介したかったんだ。
予想外にもう一人増えたがな。
とにかく、食堂へ入ろうか」
おじい様に言われて5人で食堂へと入っていくと、そこには5人がすでに席に着いていた。4人はわかるけど、一人見覚えがない男の子がいるからその子が紹介したい子だろう。叔父様に似てとても整った顔をしていた。
全員が席に座るとおじい様が口を開いた。
「さて、全員揃ったな。
今日はバングルートの帰国を祝してこうして全員集まってもらった。
それと我が家にもう一人、増えることとなった」
そこまで言うと叔父様とその男の子が立ち上がった。
「久しぶりだね、皆。
さて、今日は私の息子を紹介しよう。
セイットだ」
「初めまして。
よろしくお願いします」
微笑んでそういうとセイットと紹介されたものは頭を下げる。
そちらを見ていると、なぜか思いっきりセイットと目が合い、ニコリと微笑まれる。なぜ?
「初めまして、セイット。
従兄弟のアースベルだ」
「ルクーシオです」
「アゼリアと申します」
「ウェルカと申します」
一人ずつ名前を言っていくと、では食べようかとおじいさまが言う。すると、すぐに料理が運ばれてきた。今日もとてもおいしそう。
セイットはというと、何やらたまに料理を珍しそうに見ながら食べていた。今まで見てこなかった料理だったのかも。
そのまま和やかに会話をしながら食事が行われていった。何でも叔父様は世界中で信仰されているウィーゼット教の本神殿があるウィリット神国にわが国で唯一出入りを許された人らしい。そのため、王宮に外交官として勤めているがほとんどをそちらの国で過ごしているようだ。そしてそんな国でできた子供がセイットらしい。
そんなことを小耳にはさみつつ、食事は終わっていた。
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