想い人

蒼者(あおもの)

第1話 「心の中は」

僕たち人間は 自分の目で見たものしか

信じないだろう

僕たち人間は いつだって自分が優先で

そんな自分をごまかしたくて

人助けやら 他人にいいことをしても

結局は 自分が大事という論に至るのだ


人の心の中にある「想い」というのは

僕には目に見えないが 感じることはできる


薄い気持ちでがんばって

いつかの自分の為だ、と必死になってる人

そんな人の心の中だってきっと

僕には知りえない闇を秘めていると「思」う


僕の胸にある こんな小さな部屋じゃ

心だって 愚痴を吐きたりないだろう

いつの間にか人は 願いもわがままも

口に出さず 我慢しだした


僕もそのひとりだ


僕はまだ高2の学生

毎日休むことなく 学校に行っている

友達はいない

だからって全然悲しくはない

だが クラスメートに気に食わない奴はいる

"高橋"だ


授業中では 後ろの席の"山田"と喋ってて煩い

前に 僕と肩がぶつかって

「おい、どこ見てんだよ」 と

明らかに 向こうが悪いのに攻められた


あいつがとにかく嫌いなんだ

でもそれは「想」っているだけで

本人には言わない

そうやって僕の心の中で

他人への不幸を願う気持ちと 不快感が

日々日々積もってゆく


僕みたいな人は きっと少なくないだろう

いや、むしろそういう人の方が

大多数だろう


そういう人は その不満を

何にぶつけているのだろうか

心で叫んでいるだけ?

それともストレス解消法などがあるのか

僕には まったくもってない


だから どうしようもないこの感情を

学校の屋上から 身を投げながら

「みんな死ね」 と叫びながら放った

そして目を瞑(つぶ)る

体が落下していくのが分かる、風を感じる

さっき握っていた手すりの感触が

まだ手に残っている


そして 間もない命が 一回 二回と 呼吸した

三回目は きっと無いだろう


グチャ!


何かが弾ける音がした

ああ、僕は死んだんだな

この「想い」を誰にも言えないまま

打ち明けないまま

別に高橋へのストレスだけじゃない

世間体すべてにだ

そしてどこにいくのだろう、天国?地獄?


僕の視覚は 全方位 真っ暗だった

すると 夜明けのように だんだんと光がさす

目が慣れてきて そこにある「景色」が見えた


ものすごくでかい 手足は何本あるだろう

目はどこにある?口は?鼻は?

そう、僕の目に映ったのは

黒いマントを羽織り

まるでクラーケンを風貌とさせる 「怪物」だ


「お前が...」

醜い怪物は 僕にそう言った...

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