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「うわー。

 凄い綺麗になったなあ。

 ありがとうシェリル。」


「いえ。

 なんだかやり始めたら止まらなくなりまして。」


 あれから1週間。


 綺麗になった小屋を覗きクリスが感心しながら唸る。


「アルブスが亡くなってから掃除する人がいなくてね。

 本当に助かったよ。」


「アルブス?」


「前の執事長。

 多分キャロルも知ってるから聞いてみたら良い。」


 クリスの言葉にシェリルは頷く。


「さっ今日はもう遅いしうちで夕飯を食べて行くと良いよ。

 ちゃんとシェリルは頑張ったって陛下には言っておいてあげるから。」


「お小遣い増額して貰えますかね?」


「…それは厳しいかなあ。」


 苦笑いで答えるクリスについて行きホールに辿り着く。


「俺の妻は今日は残業らしいし父上も領地にいるから2人だけで寂しいかもしれないけど我慢してね。」


「いえ別に構いません。」


 シェリルはそう答え席につく。


 運ばれて来た料理に舌づつみを打っているとホールの扉が突然開いた。


 漆黒の髪に真っ黒な瞳。


 シェリルの姿を確認し訝しげに細められる目付きは鋭い。


 一体何者だとシェリルが睨み返すとクリスが顔を上げた。


「あっ兄上、お疲れ様です。」


「…お前がいるとは珍しいなクリス。」


「陛下に頼まれたから暫くこちらに滞在すると言ってあったでしょう。」


「…あぁ、そうだったか?」


「書類とばかり向き合ってるから記憶力が低下するんですよ。

 あとその眉間の皺、本当に取れなくなりますよ。」


「お前の様に年がら年中笑ってなどいられるか。」


「年に1回笑うかどうかってのも大分重症かと思いますよ。」


「……。」


 クリスの言葉に言い返せなかったのか男性は舌打ちをしながら席に着く。


 男性はシェリルを見ると眉間に皺を寄せたまま口を開いた。


「…ワインスト侯爵家長子グリム・ワインストだ。

 シェリル第一王女殿下の叔父にあたる。」


「…はぁ。

 初めまして。

 私マリアヌ国第一王女シェリル・ノア・マリアヌにございます。

 お会い出来て嬉しゅうございます。」


「…あぁ。」


 そのままグリムは運ばれて来た食事に黙って手を付けた。


 ……気まずい。


 なんだこの気まずさ。


 そもそもシェリルは母親からクリスの話は聞いた事は何度もあるがグリムの話は聞いた事がなかった。


 存在も知らされていなかった叔父の突然の登場に戸惑うなと言う方が無理のある話だろう。

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