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「まあ陛下もキャロルとレオン殿がいたらシェリルの情操教育が大変なんだろうとは思うよ。

 あの2人は多分シェリル寄りの考え方だし。」


「あー確かに母様と宰相様には怒られた事ありませんね。」


「レオン殿は面白がって便乗するタイプだしキャロルはそもそも怒るとか感情を剥き出しにするのが苦手だからね。

 …まあ俺達のせいなんだけどさ。」


 そう言ってクリスは寂しげに笑いながら紅茶に口を付ける。


 シェリルはんー?と首を傾げた。


「母様とクリス叔父様って何かあったんですか?」


「あれ?

 昔の事ってキャロルや陛下から聞いてないの?」


「聞いた事ないですね…。」


「まあキャロルも陛下もそう言うの話しそうにないもんなあ。

 2人共他人に弱みなんか見せたら死ぬって考えてる節があるし。」


「心の壁だけは超分厚いですからね。

 どんだけ守ってんだよって位分厚いですからね。

 で?

 一体何があったんです?」


 身を乗り出して尋ねるシェリルの頭をくしゃりとクリスが撫でた。


「…2人が言わないなら俺からも言えないな。

 気になるなら2人に聞いたら良い。」


「そんなぁ…。」


「大丈夫。

 シェリルが真剣に聞いたら教えてくれると思うよ。」


「あの永久凍土レベルに堅い壁を纏った2人が教えてくれますかね?」


「きっと教えてくれるさ。

 娘なんだから、な?」


 さっそろそろ掃除を始めるかとクリスが立ち上がりシェリルもつられて慌てて立ち上がる。


 肖像画の飾られた廊下をクリスの後ろに続いて歩きながらシェリルは1枚の絵の前で立ち止まった。


「…これ、母様ですか?」


「えっ?

 …あぁいや。

 それはアイラ・ワインスト。

 …俺達の母親だ。」


「私のお祖母様ですか?」


「あぁ…。

 もう亡くなっているけどな。」


「そうなんですか…。」


 クリスの表情に陰りを感じシェリルが言葉を濁す。


 クリスはくしゃりと笑いながらシェリルの頭をぐしゃぐしゃと掻き回した。


「本当にキャロルそっくりだなあ…。

 陛下も俺がキャロルに甘かったの知ってる癖に俺に頼むなんて良く分かんないな。」


「痛いですクリス叔父様。」


「ごめんごめん。

 じゃあ今日は庭の小屋の掃除をして貰うかな。

 道具は持って来るから頑張れよ?」


「はい、分かりました。

 因みに賄いは付きますか?」


「…お腹空いてんの?」


「夕飯抜きだった物でして。」


「…賄い付けてやるから頑張れ。」


「分かりました。」


 そう答えたシェリルは黙々と掃除を始めたのだった。

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