315

「キャロルはさっきの説教じゃ全く分からなかったみたいだね。

 後でもう一度」


「あっあれ巫女様じゃないですかね?

 おーい。」


 ルシウスに説教リターンズの宣言をされそうになりながらキャロルは視界の隅に入った真っ白な女性に必死で呼びかける。


 この面倒な状態を抜けられるなら誰でも良いと懸命に手を振った。


 巫女はこちらに気が付くと鈍色の瞳を歪める。


「げっ!

 金髪魔王とサイコパス令嬢!!!」


「久しぶりですね巫女様。

 今みんなで飲み会してるんですよ。

 ささっ巫女様もぜひぜひ。」


「…飲み会は惹かれるけど面子が怖いわね。」


「何言ってんですか巫女様。

 友達ばかりの楽しい飲み会じゃないですか。

 さあさあ座りましょ。

 ね?」


「あんた何か必死ね。

 危険な臭いがするから今日はやめと」


「良いから座れや。」


「そのすぐ脅す癖辞めなさいよ!

 あんた自分が思ってる以上に表情筋ぶっ壊れてて怖い事自覚しなさい!

 真顔過ぎて冗談か分かんないのよあんた!」


「冗談なんて私言いませんけどね。」


「余計にタチが悪いわ!」


「まあまあ巫女さんも座って座って。

 今日のおツマミは私が作ったから感想聞かせてくれると嬉しいな。

 巫女さんは麦酒と赤ワインと白ワインどれが良い?」


「…聖女様がそう仰るなら。

 麦酒頂けますか?」


「巫女様私への態度と違い過ぎません?」


「聖女様はあんたと違ってサイコパスじゃないからよ。」


 巫女が聖女の隣に座りながらキャロルに毒を吐く。


 大分飲み会として賑わってきた。


「そう言えば弟は呼んでないのかい?」


「うん。

 ハリー君は領地の方でハリケーンがあったからその対応で忙しくて無理なんだ。

 来たいって残念がってたけど。」


「そっか。

 じゃあまた呑もうって伝えておいてくれるかい?」


「私も久々にお話ししたかったとハリー公にお伝え下さい。」


「あはは分かったよー。

 でもキャロルさんの伝言はハリー君怯えちゃいそうだなあ。」


「えっ何でですか。」


「ハリー君、未だにキャロルさんに怯えてる感じがあるんだよね。」


「弟の1番苦手な相手はキャロルらしいからね。」


「私は別にハリー公の事苦手じゃないんですけどねえ。」


「サイコパスには分からないのよ。

 サイコパスだから。」


「巫女様もしかして私の事嫌いですか?」


「ようやく気付いてくれたのね。」


「ツンデレってやつですか。」


「違うっつってんだろサイコパス。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る