縁の紡ぐ道

314

 羊雲が浮かぶ秋空の下。


 視察から戻りしこたまルシウスから説教を受けたキャロルは不貞腐れていた。


 聖女への土産として持ち帰ったおミソなる物で作って貰ったミソ炒めなる料理をつまみながらレオンにブー垂れている。


「2時間ですよ2時間。

 お前どんだけ説教できるんだよって思いません?」


「今回はキャロルが悪い。

 陛下に無断で3ヵ月半、ついでに出かけて1ヵ月の外出だろ?

 キャロルが帰って来るまでの執務室の空気やばかったんだからな。」


「そうだよキャロルさん。

 お味噌は有難いけどさあ、ルシウス君だってあんなに放置されたらそりゃ怒るよ。

 あっでもお味噌ありがとうね。

 これで漸く豚汁が食べられるよー。」


「とんじる?」


「日本の料理でね、めちゃくちゃ美味しいスープなんだよ。」


「あっそれ私にも今度食べさせて下さい。」


「俺も俺も!!」


「いいよー。

 めちゃくちゃ美味しいから期待しててね!」


 彩花嬢が片目を瞑りながら親指をグッと立てる。


 キャロルは礼を述べながらジョッキに注いだ麦酒を煽った。


 レオンも酒が進む!とミソ炒めをつつく。


 平和過ぎる光景である。


「あっレオン君全部食べちゃダメだよ?

 後でルシウス君とリアム君も食べるんだから。」


「えっそうなのか?」


「うん!

 味噌の輸入を認めてくれたからそのお礼にご招待してるんだ。

 だから残しておいてね。」


「げっ。

 彩花様何で余計な事してくれてんですか。」


「酷い言い方だねキャロル。」


 キャロルが振り返ると先刻まで説教をかましてくれていたルシウスが立っていた。


 キャロルは眉間に皺を寄せる。


「…先刻ぶりです陛下。」


「うん、説教ぶりだねキャロル。

 聖女殿、お招き頂き感謝するよ。」


「いいよいいよー。

 さっルシウス君とリアム君も座って座って。

 2人はワインで良い?」


「あぁありがとう。」


「ありがとう聖女様。」


 ルシウスが椅子を引きキャロルの隣に腰かける。


 彩花嬢に渡されたワインで喉を潤し、キャロルの顔を覗き込んだ。


「で?

 なんで夫が来るって聞いてげって発言になるのかなキャロル?」


「聞き間違いじゃないですかね?」


 キャロルが視線を逸らしつつシレッと答えるがルシウスは負けずにキラキラとした笑顔で威圧してくる。


 鬱陶しさ全開だ。


 キラキラとした笑顔の向こうに黒々としたモヤが見え隠れしている。


 こいつ笑うとやっぱり怖いと頭の片隅でキャロルは思った。


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