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「まあこの話はここまでにしようか。

 私もキャロルを責めるために呼んだ訳ではないからね。

 聞いたよ。

 自由になってもまだ引きこもって魔女の渾名を付けられてるんだってね?」


「…まあその通りですが。」


「海外に行って色んな所に行きたいって言ってたから私はそっちを探していたよ。

 さすがキャロルだよね。

 塔から出ても引き込もるとは予想外だった。」


「気が付いたんですよ。

 1人で行っても味気ないって。」


 不貞腐れたキャロルの言葉にルシウスがにっこりと笑う。


「なら一緒に行くかい?」


「…皆の休暇が合うならまあ。」


「いや。

 休暇は休暇で合わせたらいいけどね。

 休暇じゃなくて来月西の方に視察があるんだよ。」


「へーそうなんですか。」


「一緒にどう?

 麦酒の名産地らしいけど。」


「視察ですよね?

 行きませんよ。

 明らかに部外者じゃないですか。」


「王太子妃なら部外者じゃないよ?」


 キャロルはポカンと口を開ける。


「…血迷われたんですか?」


「12年前と同じセリフだね。

 残念だけど血迷ってないよ。」


「…はあ。

 そうですか。」


 キャロルは頭を落ち着かせようと紅茶に手を伸ばした。


 昔から頭のおかしいやつだとは思っていたが10年経ってもおかしかったらしい。


 前科のある人間を王太子妃になど頭が狂っているとしか思えない。


 キャロルはカチャリとカップを置いた。


「えーっとですね殿下。

 私は10年間は貴族社会から離脱し、魔術師のくせに魔術も失った云わば欠陥品なわけです。

 王太子妃には相応しくないかと。」


「そうかな?

 私だって王太子の筈なのに大々的に見合いをして失敗させた挙句、命を助けてくれた令嬢に逃げられ行き遅れた人間だよ?

 巷では性格に難がある顔だけの似非王子なんて呼ばれてるらしいからね。

 似非王子には欠陥令嬢でも充分有難い話だと思わない?」


 ルシウスの悪戯っ子のような笑みにキャロルは項垂れる。


「…似非王子と欠陥令嬢が次の政を仕切っていいと思うんですか?」


「いいんじゃない?

 偽物でも欠陥品でも。

 魔力がなかろうが型に嵌らない令嬢だろうが。

 私はそれがいいんだから。

 というか私はキャロル以外娶るつもりはないからね。」

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