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「そして時渡りの他に使用した禁術は二種類。

 魔力劫掠術と心身玩弄術でございます。

 そちらも文の中に記載がございますのでご確認下さいませ。

 ワインスト家に対する禁術の使用は以上となります。」



 キャロルはふっと顔を上げた。


 王妃がこちらを憎悪の眼差しで睨み付けている。


 だがキャロルだって憎悪なら負けていない。


 どれだけ憎んでも憎み足りない程憎くて堪らないのだから。


 キャロルはニヤリと挑発する様に笑みを浮かべる。


 まだまだ終わらせるわけがないだろう。


「続きましてマリアヌ国王族に対する罪状について述べさせて頂きます。

 まずイザベラ前王妃陛下に対する魔力劫掠術の使用及び殺害。

 またルシウス王太子殿下に対する毒の混入、又は暗殺の命令。

 ルシウス王太子殿下に関しましては証拠が残っていた物で429件ございます。

 そちらの羊皮紙に纏めてありますので後程精査の程よろしくお願い致します。」


 これらを集めてくれたのはアグネス嬢の父カルヴィン公爵だ。


 エバンネ王妃派の貴族を探り見つかる限りの証拠を探し出してくれた。


 レオンが助けを求めると数日で山積みの証拠品を渡してくれたと言う。


 さすが公爵家だ。


 その中で立件出来そうな物をフワリー嬢とアグネス嬢で纏めてくれたという。


「そして最後に聖女を偽装し異世界召喚術の使用について。」


 キャロルはハリーの横に座る彩花嬢に視線をやる。


 彩花嬢は真っ直ぐにキャロルを見詰め小さく頷いた。


「異世界召喚術については王妃陛下の命でアルバート公が行ったという文が残されております。

 …また聖女様本人への確認で異世界召喚術によって召喚された者に見られる特徴と一致しました。

 まず魔力量の少なさ。

 こちらが聖女様の教会で調べた魔力に関する資料です。」


 キャロルはペラリと羊皮紙を掲げた。


「聖女様の総魔力量はAランク。

 これは王族と並ぶ程の魔力量を持つとされる聖女にしては低いと判断出来るかと。


 ・・・そしてもう1つ。

 聖女様御本人がこちらに渡る際突然地面が光り吸い込まれたと証言なさっておられます。

 これは亡くなった記憶を持つとされる聖女との違いに当てはまります。

 ただ聖女様には光魔術が使用出来る。

 この事から聖女様はアルバート公が召喚した人物であると断定出来ると思われます。」


 ハリーが心配そうに彩花嬢の肩を抱き締める。


 だが彩花嬢は真っ直ぐにキャロルを見詰めたままだ。


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