革命の刻

281

 ルシウス王太子殿下の15歳の誕生日前日。


 王宮の広間には国中から大勢の貴族が集まっていた。


 緊迫した空気が流れている。


 レオンは父の後ろに座りながらチラリと時計を見た。


 現在場の流れはルシウスの第一継承権剥奪に向いている。


 ハリー第二王子が途中後1年待って欲しいと声を上げていたが通りそうにない。


 本来継承権剥奪については16の誕生日の前に行われるのだ。


 だが王妃は一刻も早くハリーを王太子にしたいのだろう。


 他の貴族も黙っているか1年も眠り続け魔力の消えた王子に王太子は無理じゃないかと言う論調になってしまっている。


 実際その通りなのだ。


 だからレオンの父もアグネス嬢の父である公爵もルシウス派でありながら声を上げられない。


 1年待つという猶予をいかに得られるか位しかもう打つ手がないのだ。


 ただそんな物時間稼ぎにしかならないと分かっていて通る話ではない。


 殆どの貴族の意見が出揃い残すは騎士団や魔術師会、文官達からの意見になる。


 論調はほぼ変わらないだろう。


 レオンは両手を握りしめ神に祈る。


 この後に起こる奇跡を信じながら。



 静まりかえった広間の扉を開く音がやけに大きく響く。


 台車一杯に積まれた羊皮紙を携えてキャロルの靴音が広間に鳴った。


「…遅れて申し訳ありません。

 魔術師会魔道具開発部所属のキャロルです。

 発言をお許し頂けますでしょうか?」


 キャロルの顔は青白い。


 息も荒く今にも倒れかねない程危うい。


 だがその眼光は鋭く周囲の人間が息を呑み込む。


 上座に座っていた国王の眉が動く。


 ようやく来たかと言わんばかりに小さく笑う。


「…同じ意見ばかりで飽きておった所だ。

 かまわん。

 申してみよ。」


「ありがたく存じ上げます。

 …今から私が申し上げます事は全て嘘偽りない事を宣言致します。」


 キャロルは視線を王妃に向ける。


 11年待ったのだ。


 ようやく捉えた獲物を睨み付け声を張り上げる。


「今この場でエバンネ王妃陛下の王位剥奪の必要がある事、及びハリー第二王子殿下にも継承権がない事を訴えさせて頂きます!」


 会場が一斉にどよめく。


 これが偽りだった場合この発言だけでキャロルの反逆罪適用は免れない。


 処刑が確定してしまうのだ。


 だがキャロルは真っ直ぐに王妃だけを射抜いていた。


 王妃も口元を扇で隠しながらキャロルを睨み付けている。


 それは紛れもない革命の始まりだった。

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