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「…なんて頷いたけどさあ。」


 キャロルは図書館の片隅で本を手に取りながら溜め息をついた。


 台車を押しながら目に付いた本を片っ端から乗せていく。


 職員がまたかという顔をしながらこちらを見ている。


 この数ヶ月数日置きに繰り返されている光景に呆れ半分という表情だ。


 だが数ヶ月繰り返した結果今の所全く手応えはない。


 そもそも最初に自分で言っていた通りルシウスの様になった人間の事例など聞いた事がないのだ。


 いくら本を探した所で見つかるとも思えない。


 だが砂漠で一滴の水を見付ける覚悟でごく僅かなヒントを見つけようとひたすらに図書館に足を運び続けていた。


 だが日にちばかりが過ぎる現実に最近は溜め息が零れっぱなしだ。


 アンジェリカ嬢やレオンやリアムはそれぞれ僅かずつでも進展があると聞いておりそれもまたキャロルを落ち込ませる原因だ。


 自分だけ何も出来ていない。


 キャロルはまた溜め息をついた。


「…すいません。

 これの貸し出しと配達をお願いします。

 後一昨日借りた本の回収もついでにお願いします。

 えっと配達先は」


「ああ大丈夫ですよ。

 存じ上げておりますから。

 貸し出しの処理と配達の時間で2時間後の配送予定になります。

 回収する書物を1箇所に纏めておいて下さいませ。」


「了解です。

 ありがとうございました。」


 キャロルはペコリと頭を下げて貸し出しカウンターに背を向ける。


 台車いっぱいに貸りたがきっと今回も空振りだろう。


 どこにヒントがあるのか皆目検討もつかない。


「禁書コーナーにあったりして…。

 まあ入れないけど。」


 独り言を呟きながら図書館を出る。


 頭を悩ませるキャロルの腕をぐいっと誰かが引いた。


「キャロルさん!

 こんな所にいた!!」


「…あっ彩花様。

 お久しぶりです。」


「久しぶりじゃないよ!!

 心配したんだからね!」


 彩花嬢がプクッと頬を膨らませている。


 身長が伸びたのかキャロルを見下ろしている。


 少し腹立たしい。


 キャロルだって成長期のはずなのに何故伸びないのだ。


「あれ?

 今日って学園じゃないんですか?」


「学園は今テスト週間だから午前中で終わりなんだよ。

 …じゃなくて!

 キャロルさんとルシウス君はいきなり学園休みだしちゃうし、魔術師さんに呼ばれて行ったらルシウス君意識ないし、キャロルさんに聞こうにも会えないしでびっくりしたんだからね!」


「殿下にお会いしたんですか?」



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